激しさを増してきた、米中覇権戦争における「情報戦」。その一環とされる「中国によるウイグル人弾圧の実態暴露」に、英国も本格参戦し始めましたが、その裏には香港デモにより悪化した「英中問題」も絡んでいるようです。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、複雑な英中関係を解説するとともに、米英がこぞって批判する中国のトップを国賓として招く日本の愚かさを改めて批判しています。
米英の【中国悪魔化】情報戦が進んでいる
皆さん、「世界で何が起こっているか知りたい」と考えておられることでしょう。その為にもっとも必要なことは何でしょうか?一つのフレーズを、頭の中に叩き込んで、忘れないことです。そのフレーズとは何でしょうか?【米中覇権戦争が起こっている】です。
特に、「戦争」という言葉が重要。これ、「たとえ話」ではありません。「ほんまもんの戦争」が起こっている。アメリカも中国も「核大国」。だから、「戦争」といっても、大規模な「戦闘」は起こりにくい。それで、「別の形態」の戦争が起こる。
- 情報戦
- 外交戦
- 経済戦
- 代理戦争
今、世界では、これらの戦争が起こっている。「関税引き上げ合戦」「ファーウェイ問題」など経済戦ばかりに目が行きがちですが。実をいうと、情報戦も非常に大事です。というのは、情報戦なら、アメリカは圧倒的に有利だから。なぜ?
中国には、「情報戦のネタ」がゴロゴロしている。中国は、共産党の一党独裁国家である。中国は、神様を否定している(これ、キリスト教が強い欧米では特に重要。イスラム圏にもアピールできる)。中国には、信教の自由、言論の自由、結社の自由がない。中国は、チベット人120万人を虐殺した。中国は、ウイグル人100万人を強制収容所に閉じ込めている。これらの事実は、世界中の人が知っていることです。
しかし、2018年7月に米中覇権戦争が勃発するまで、ほとんど注目されていなかった。なぜ?皆、「チャイナマネー」が欲しい。だから、「人権」「民主主義」などにうるさい欧州もアメリカもだまっていた。欧米は、明らかに、金 >>> 人権 だったのです。
日本だって他国のことはいえません。1990年代、2000年代、日本企業は、こぞって中国に進出していった。これらの企業は、中国がひどい人権侵害国家であることを知らなかったのでしょうか?もちろん知っていたでしょう。ですが、数十分の1という賃金水準、13億人の市場という【大金】を前にして、人権という言葉は全然意識されなかったのです。
米英は、真剣に中国【悪魔化】に取り組み始めた
情報戦の目的は何でしょうか?そう、敵国を【悪魔化】することです。なぜ?「悪魔化」すると、国々は「悪魔のような国とはつきあいたくない」と思うでしょう。要は、「村八分」にする。敵国を「孤立」させる。
国内むけの理由もあります。敵国を「悪魔化」させることで、たとえば敵国に経済制裁するのも「やむなし」と国民に納得してもらう日本も、米中に「情報戦」でやられた過去があります。日本の世界支配計画書「田中上奏文」が拡散され、「世界支配を画策する悪の帝国」にされてしまった。
今、アメリカは、かつて日本にしたのと同じことを中国にしている。違いは、「日本には世界支配計画はなかった」ですが、中国は実際に100万人のウイグル人を強制収容していること(これは、国連も認めている事実です)。