大型対策、必要性に疑問符 遠のく財政再建

2019.12.06
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by 時事通信

 「令和」初の経済対策は、与党からの歳出圧力が高まり13兆円を超える大規模な財政措置となった。政府は起こり得る経済リスクに備え、先手を打った格好だが、景気回復期とされる中での大型対策には必要性を疑問視する声も上がっている。歳出の膨張で財政再建は遠のきかねない。
 安倍晋三首相が11月に経済対策を指示して以降、与党幹部から「(2019年度補正予算案は)10兆円を下らないものが必要ではないか」(自民党・二階俊博幹事長)など「10兆円」への言及が相次いだ。自民党内では、消費税増税後の景気鈍化への危機感が根強い。前回の衆院選から2年以上がたち、解散総選挙に備え、大型対策を有権者に誇示したいとの思惑もあるとみられる。
 ただ、政府は国内経済について「緩やかな回復基調にある」との認識を維持。経済界が最も気にする為替は1ドル=108円前後の円安水準で安定し、日経平均株価は2万3000円台と年初来高値水準で推移している。
 ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査部長は経済対策に関し、災害対応の重要性は指摘しつつも「景気が実際に下振れしている状況ではなく、意義付けがはっきりしない」との見方を示す。
 高齢化に伴う社会保障費の増大などで国の台所事情も厳しい。中国経済の減速などで19年度の税収は当初見込みより下振れし、新たな国債発行は避けられない。国の借金が積み上がれば、25年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化させる財政再建目標の達成はさらに難しくなる。
 財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が11月、19年度補正予算案について「真に有効で必要な措置かを慎重に見極めるべきだ」とする建議(意見書)をまとめたばかりだ。
 麻生太郎財務相は5日の臨時閣議での経済対策決定後、「最初に規模ありきで決めたわけではない」と説明したが、財務省内では「ここまで(与党幹部から)具体的な数字を繰り返されると、圧力は相当感じる」(主計局幹部)とため息も漏れる。「安倍一強」のひずみが予算編成でもちらついている。(2019/12/06-07:07)

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