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現役医師が警告。赤身魚の刺し身によるヒスタミン中毒に要注意

沖縄でよく食される青魚で赤身魚のシイラによる集団食中毒がこの夏、浦添市で発生しました。マグロ、ブリ、サンマ、サバ、イワシなどの赤身魚は、ヒスタミン食中毒を起こすことがあり、「青魚は足が早い」などと言われる主な理由となっています。メルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』の著者で沖縄在住現役医師の徳田先生が、ヒスタミン食中毒のメカニズムと症状、治療法から予防法まで解説。個人宅で発生した場合は、魚アレルギーと診断される恐れもあり注意が必要だと呼びかけます。

赤身魚によるヒスタミン食中毒とは?

この夏、沖縄県浦添市の小中学校に提供した給食で「シイラ」の魚フライを食べた生徒ら約50人が、唇や舌のしびれを訴え、何人かは医療機関を受診しました。しびれは食後1時間ほどで治まり、入院となる人はいませんでした。調査した保健所によると、しびれの原因はヒスタミン食中毒の可能性がある、とのことでした。

細菌に汚染された魚を食べるとヒスタミン食中毒にかかることがあります。これは、魚の解凍後などに室温で放置してしまうなどの不適切な温度管理で、魚に存在するモルガネラ菌などの細菌が増殖し、魚に含まれる「ヒスチジン」というアミノ酸がヒスタミンに代謝され、それを食べた人間がヒスタミン中毒の症状を発症するものです。

ヒスタミン食中毒の症状は、食べた直後から1時間以内に起こる、顔面、特に口の周りや耳たぶが紅潮し、しびれ、頭痛、じんましん、発熱などです。重症では、全身の血管が拡張するために、血圧が低下します。治療は抗ヒスタミン薬の投与です。症状が強い場合には速やかに医療機関に受診して抗ヒスタミン薬を注射してもらったほうが早く良くなります。

ヒスタミン食中毒はアレルギーではない

ヒスタミン食中毒はアレルギーではありません。ですが、多くのアレルギー症状ではヒスタミンが人間の体内で作られることによって症状が出ます。ヒスタミン食中毒の症状は、人間の体内ではなく体外(魚)で作られたヒスタミンを摂取することによって起こるものであり、アレルギーと似た症状となってしまうことからアレルギーと紛らわしくなるのです。

今回の食中毒事件では1度に大量のケースが発生したことより、アレルギーではなく食中毒であったことがすぐにわかります。しかしながらこの中毒が1人の患者のみ起きた場合には、アレルギーとの区別が難しいために、診察する医師でも魚アレルギーと診断してしまう恐れもあります。もともと魚アレルギーを発症したことがない人が、アレルギー様の症状を呈したときにはこの中毒の可能性も考えた方が良いと思います。

最近5年間の日本国内でのヒスタミン食中毒として報告されてたのは、1年間に7~15件で患者数は61~405人です。件数に対して患者数が多くなっているのは、給食施設を原因とする大規模な食中毒が発生しているのと、家庭における発生では症状が軽いケースでは医療機関に受診せずに自然治癒していること、そして受診していても単発例では医療機関によって保健所に報告されていないからだと思います。

ヒスタミン食中毒が起こる状況

前述のように、ヒスタミン食中毒の原因となる魚は、「ヒスチジン」というアミノ酸を多く含む赤身魚です。代表的な魚は、マグロ、ブリ、サンマ、サバ、イワシです。シイラは、別名マヒマヒで、青魚でかつ赤身魚です。

これらのヒスチジンを多く含む魚を暑い夏に「常温で放置」するとヒスタミンを産生する菌が増殖し、ヒスタミンが生成されるのです。これらの魚をフライで調理すると細菌を死滅しますが、ヒスタミンは消えません。今回もフライした魚でした。地球温暖化の影響で毎年の夏が猛暑となっています。そんな中で赤身魚を暑い室内で放置すると、ヒスタミンがたくさん作られます。私の予想では、地球温暖化のためにヒスタミン食中毒が増えると思います。

ヒスタミン食中毒を予防する方法は解凍した後で常温に放置しないことです。解凍したらすぐに食べるようにしましょう。また、以前に私が治療した患者さんは、スーパーでの売れ残りセールのマグロの刺身を夜中に購入してそれを自宅で食べた男性がヒスタミン中毒で救急搬送されました。スーパーの食品売り場での冷蔵であってもヒスタミン食中毒が起こりうるので、私は売れ残りセールの刺身は避けるように注意しています。

●文献:
山木将悟, 山崎浩司。水産物におけるヒスタミン食中毒とヒスタミン生成菌。日本食品微生物学会雑誌 36 (2), 75-83, 2019

image by: Shutterstock.com

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