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今後の通信行政に不安。総務省有識者会議の「茶番」と「的外れ」

以前掲載の「ケータイ『解除料1000円』をゴリ押し。総務省が挙げた呆れた論拠」等でも、改正電気通信事業法を巡る総務省や有識者会議に対して疑問を投げかけてきた、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さん。今回石川さんは自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、先日同省で開かれた有識者による「モバイル市場の競争環境に関する研究会」のあまりに酷い「茶番ぶり」や、ネットオークションにまで介入する姿勢を見せた総務省を厳しく批判しています。

総務省、改正電気通信事業法の評価方法を検討――有識者「MNP件数を見るべきではない」の仰天発言

12月2日、総務省で「モバイル市場の競争環境に関する研究会第21回)」が行われた。

いくつかの議題があったが「これまでの議論を踏まえた検討の方向性という議論が本当にひどかった。あまりの茶番ぶりに、改めて今後の通信行政に不安を感じてしまった。

10月より改正電気通信事業法が施行されている。この有識者会議で、改正法がきちんと機能しているか、これから評価するものだと思っていた。とはいえ、そもそも自分たちが作ったルールが正しいかどうかの評価を自分たちでできるものか、かなり疑問ではあった。

競争など起きず、市場が低迷すれば、それは改正法が間違っていたということになる。しかし、有識者会議で「改正法が間違っていた」となれば、自分たちの首を絞めることになる。有識者の先生方が自分たちの考えが間違っていたと会議で認めるというのはプライドが許さないのではないか。

そんななか、改正法を評価する上において、有識者のなかから「MNPの数字で評価すべきではない」という驚きの発言が出てきた。

そもそも、モバイル市場の競争環境を促進させるために有識者会議を行い、法改正に着手したのではないか。

さらに有識者会議の議論が物足りないと、総務省は議論を全く無視し、ゴリ押しでネットアンケートを実施。結論ありきで解除料1,000円」「2年縛りの見直し」を導入し、契約を解除しやすく環境を整備したはずだ。

それもこれも「キャリア間でのユーザーの流動性を高めるため」が目的ではなかったのか。

その指標となるはずのMNPの件数を評価の対象とせず、何を持って、改正法が機能しているかどうかのチェックできるというのか。

「MNPの件数を評価軸としない」というのは責任放棄でしかないように感じた。

さらに別の有識者からは「評価は難しいとさじを投げた発言も聞き捨てならなかった。

来春から5Gが始まるが、当然、キャリアは値下げするどころか現状維持、もしくは値上げ方向の料金プランを設定してくるだろう。

結局、キャリア間の流動性は落ち、通信料金は値上がりし、端末の割引も受けられない状態になる。

総務省と有識者の愚策により、キャリアが儲かり、ユーザーが損をする。誰のための法改正だったのか、という振り返りもないまま、まもなく5G時代に突入しようとしている。

総務省が今度は「ネットオークション」に介入――中古スマホ流通でヤフオク、メルカリ、ラクマが標的に

もうひとつ、有識者会議で気になったのが、ネットオークションへの介入だ。

会議では「中古端末市場の動向」として、総務省がプレゼン。さらにリユースモバイル関連ガイドライン検討会が、中古端末におけるリユースモバイル事業者認証制度などについて説明を行った。

総務省のプレゼンにおいてヤフオクやメルカリ、ラクマにおける中古スマホの流通について触れられたのち、有識者から「ネットオークションにおいても安心して中古端末を取引できるようにすべきではないか」という意見が出された。

そもそも、端末と料金が分離されている中、なぜ、総務省は端末販売のみならず、中古市場にも口出しをするのか。しかも、個人間の取引であるネットオークションやフリーマーケットにまで介入するのは理解に苦しむ。

ちなみに事実関係としてはリユースモバイル事業者認証制度には審査委員会があり、その中には有識者が名前を連ねている。

リユースモバイル事業者たちにとってみれば、街中の中古端末取扱事業者を経由せず、ネットオークションなどのC2Cプラットフォームを経由して中古端末が個人間で取引されるのは看過できないのだろう。

有識者の中には「海外でC2Cプラットフォームを利用してペットを売買すると、それだけで個人ではなく事業者としての扱いとなる」という発言もあった。

今後の展開次第では、総務省がネットオーション企業に要請を出し、個人間の取引であっても、端末状態の表記を厳格化するなど、事業者と同等のルールを課すような動きが出てきてもおかしくない。

「消費者が安心してネットで中古端末を取引できるようにするため」との大義名分で、ネットオークションでの中古端末の流通を潰しにかかる可能性もありそうだ。

ネットオークションでの売買は、品物によっては「買取業者よりも高く売れる」とか「中古業者より安く買える」という、買い物をする楽しみが存在する。また、地方在住者であれば、最寄りに中古取り扱い店舗がなく、ネットオークションで購入するのほうが便利だったりする。

確かにネットオークションの出品者のなかには個人ではなく、企業が組織的に出品していることもある。リユースモバイルの業界団体としては、そうした企業の出品をなんとかしたいという思惑もありそうだ。

いずれにしても、総務省がネットオークション市場にまで介入しようとしているのに関しては、余計なことをしないよう目を光らせ続ける必要がありそうだ。

image by: 総務省 - Home | Facebook

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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