国外退避や出張禁止 中東緊迫化で警戒―日本企業
米国とイランの対立激化を背景に中東情勢が緊迫化していることを受け、現地に進出する日本企業は従業員の安全確保に動き始めた。イラン駐在員の国外退避や中東出張の禁止・自粛を指示する動きが広がっている。米イラン両国は全面衝突を回避したい意向とみられるが、当面は一触即発の状態が続きそうで、各社は事態の行方を注視している。
イランが8日にイラクの駐留米軍基地を報復攻撃したことを受け、三菱UFJ銀行や三井住友銀行、みずほ銀行はイランの日本人駐在員に国外退避を指示した。豊田通商や双日、兼松、日本たばこ産業(JT)も既にイラン駐在員を他の国に避難させた。
千代田化工建設は従業員の中東出張を禁止し、石油元売り最大手JXTGホールディングスは出張自粛を決めた。三菱商事は、中東地域などでは米国関連施設に近づかないよう注意喚起している。
中東情勢の緊張は、旅行や外食業界にも影響を及ぼしている。JTBでは年明け以降、中東地域の一部ツアーでキャンセルが発生。ファミリーレストランのサイゼリヤはワインやパスタなどイタリア産の輸入品を、地中海と紅海を結ぶスエズ運河経由で海上輸送している。サイゼリヤの堀埜一成社長は「航海の安全が大事。何か起こると調達に影響が出る」と緊張激化を警戒している。
全面的な軍事衝突に発展する懸念は、トランプ米大統領が8日の演説で「軍事力は行使したくない」と語ったことで、ひとまず後退した。出張禁止を決めた千代田化工も「状況を見ながら柔軟に対応していく」(広報担当)方針だが、気が抜けない状況は続きそうだ。(2020/01/10-07:11)