身に覚えのない請求書が届く「架空請求詐欺」は広く知られるようになりましたが、最近はこうした詐欺を充分に警戒している方をターゲットにした、新たなる卑劣な手口が確認されているようです。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、素人目に判断しにくい詐欺の実態と予防策を記し注意を呼びかけています。
架空請求詐欺を無視すると債権が確定する?
こんにちは!廣田信子です。
「地方裁判所民事訴訟部」というような裁判所を騙った架空請求詐欺がずいぶん蔓延しました。下記のような実際の裁判所からの通知にそっくりの文章の通知が届いたらどっきりしますよね。ひょっとしたら、知らない間にネットのサイトで課金手続きをしてしまったかも…と。
提訴の告知
あなたは支払い義務違反という事で、地方裁判所に訴状の提出が行われ、受理されております。
この件に関して異議申し立て、または取下げ希望がある場合、下記日付までに答弁書の御提出または、当局にて御相談受け賜わっておりますので、民事訴訟部ご相談窓口にお問合せ下さい。
御連絡なき場合には、この通達の14日以内に届く裁判所の出廷命令状の通達を御確認ください。
また原告側の言い分で裁判の希望日時等が全面的に認められる場合がございます。
なお当該裁判の判決を履行いただけない場合は、財産の差押え等の強制執行の法的手続きがとられます。
ところが、そこにある「民事訴訟部」の電話番号は詐欺のアジトのもの。電話をしたことで、詐欺に巻き込まれてしまうというものです。だから、身に覚えのない請求に関する裁判所を騙った通知の電話番号は絶対に電話をしてはいけない。…と、私も、過去記事に書きました。
ところが、詐欺はより巧妙になり、最近は、本当に裁判所からの通知が届くという詐欺が広まっているといいます。詐欺グループが、まったくの架空請求で、裁判所に少額督促や少額訴訟の申し立てをし、その手続きが裁判所によって開始されるのです。
なんで、裁判所が詐欺に加担するの?と思いますが、裁判所は、一方から支払い義務違反の申し立てがあれば、手続きを開始します。その請求が正当なものであるかどうかは、手続きが開始した後、相手のいい分を聞いて判断するのです。身に覚えがない架空請求であっても、裁判所の正式な手続を悪用する形で請求してきた場合には、放置しておけないのです。
本当の裁判所からの支払督促、少額訴訟の呼出状等を放置し、何も対応をしなかった場合には、そこで、架空の債権が架空でなく確定してしまうのです。管理費等の未払金の支払督促、少額訴訟で、相手側から反論がないと、そのまま、管理組合側の主張が法的に確定するのと同じです。裁判所を悪用した詐欺では、相手が詐欺と思って放置することで、架空の債権が裁判所で認められてしまうことを狙っているのです。
詐欺グループの悪知恵には驚かされます。本当に裁判所からの通知なのか裁判所を騙った通知なのかは素人では区別がつきにくいのです。ですから、まったく身に覚えのない通知であっても、放置はできないということになります。
しかし、そこに記載されている電話番号にすぐ電話をすることは絶対にしてはいけません。自ら裁判所の電話番号を調べるか、消費生活センターに相談することです。
それが、裁判所を騙った詐欺であると分かれば、無視すればいいのですが、もし、本当に裁判所からの通知であったら、裁判所にきちんと意義申し立てをしなければなりません。架空請求で、相手からの異議申し立てがあったものを、裁判で争うことはしませんから、その時点で終わりになります。しかし、これはなかなか大変なことです。普通に生活している人は、裁判所からの通知というようなものに不慣れですから。
請求の内容によっては、親族や親しい友人には相談しにくい場合もあります。近くに相談できる法律にくわしい人がいなければ、何かおかしいと感じたら、まず、消費生活センターに何でも相談する癖付けをした方がいいかもしれません。
とにかく、こういう詐欺があることを多くの人が知るがまず一歩です。
法務省の注意を呼び掛けるページ↓
● 督促手続・少額訴訟手続を悪用した架空請求にご注意ください
国民の利便性向上のために設けられた支払い督促や少額訴訟の手続きが悪用され、被害者を生み、税金を無駄にすることは、ほんとうに許しがたいことです。
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