世界に暗い影を落とす新型肺炎。そんな「疫病」が初めて確認されたと言われる中国武漢市の医師が、昨年末時点で「世界的伝染病発生の可能性」を警告したものの、中国当局に処罰されていたことがBBCの報道で明らかにされ、その後死亡したとの続報が世界を震撼させています。これを受け、今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、中国政府の隠蔽体質の実態や、日本に求められる具体的対応策を考察しています。
中国で新型コロナウィールスについて真実をいったらどうなった?
このところずっと、「新型コロナウィールス」の話がトップニュースですね。この問題、中国政府の対応の遅さが批判されています。ですが、クレムリン情報ピラミッドでは、「中国政府は、ものすごく迅速に、誠実に対応している」といった報道をしています。クレムリン情報ピラミッドでは、プーチンと中国の批判は、禁止されているがごとし。
さて、BBC NEWS JAPAN 2月4日に、「昨年末、新型ウィールスについて警告した中国人医師に対し、中国当局は、どんな対応をしたのか?」という内容の記事が載っていました。今日は、これを見てみましょう。その人は、武漢中心医院の眼科医、李文亮さんです。彼は昨年12月、重大な事実に気づきました。
■昨年12月に異変に気付く
李医師は、新型ウイルスの流行の中心となった武漢市で働いていた昨年12月、SARSに似たとあるウイルスによる7つの症例に気が付いた。SARSは、2003年の世界的エピデミック(伝染病)を引き起こしたウイルスだ。
李さんは、自分が気づいただけでなく、警告しました。
■同僚に周知
昨年12月30日、李医師はチャットグループに入っている同僚の複数医師に対し、アウトブレイクが起きていると警告するメッセージを送信。防護服を着用して感染を防ぐようアドバイスした。
広く拡散したわけではなく、同僚に警告した。そしたら、何が起こったのでしょうか?「彼ら」が来たのです。
それから4日後、中国公安省の職員が李医師の元を訪れ、書簡に署名するよう求めた。その書簡は、李医師を「社会の秩序を著しく乱す」「虚偽の発言をした」として告発する内容だった。「我々は厳粛に警告する。頑なに無礼な振る舞いを続けたり、こうした違法行為を続けるのであれば、あなたは裁かれることになるだろう。わかったか?」
こう警告されて李さんは、
その下には、李医師の筆跡で「はい、わかりました」と書かれている。
脅されて、「もうネガティブ噂話を拡散しません」と約束した。他にどうすることができたでしょうか?結局、李さんの警告は正しかったわけですが、その後どうなったのでしょうか?
今年1月末、李医師は中国のソーシャルメディア「微博(ウェイボ)」上で、この時の書簡のコピーを公開し何があったのかを説明した。その間、地元当局者が李医師に謝罪したが、あまりに遅すぎる対応だった。
李さんの警告から1か月後ですね。当の李さんはどうなったのでしょうか?1月10日に発熱して入院。何度検査しても、「新型コロナウィールス」に関しては陰性。彼が感染していると認められたのは、20日後の1月30日でした。
教訓
この話を聞いて、普通「中国はまったく!」というリアクションでしょう。しかし、李さんのところに来た公安職員は、もちろんその後のことを予想できなかったでしょう。新型コロナウィールスのことも知らなかったに違いありません。
どの時点で中国当局が、事の重体さ把握したのは正確にはわかりません。ですが、李さんの言葉を頭ごなしに否定せず、少し調べてみれば、もっと早期に対応することができたでしょう。「ネガティブな話をする奴は、皆悪人。まず脅し、それでもつづけるなら捕まえてしまえ!」というのは、中国とか北朝鮮の特殊性なのでしょう。
とはいえ、「隠ぺい体質」という問題は、中国に限らずどこにもあります。日本でも、企業の汚職を隠蔽したり、いじめ問題を隠蔽したり、いろいろあります。日本政府も、いろいろな情報を「隠ぺい」することがあるのでしょう。「え~、そうかな?」と思う人は、今日のテレビニュースを見てください。きっと、「嗚呼、そうだよな」と思うことでしょう。
それはともかく、起こったことは起こったこととして、今できることにフォーカスするしかありません。日本政府は、一刻も早く、中国への渡航禁止、中国からの渡航禁止をしていただきたいと思います。そして、中国に残っている日本人は、チャーター機で連れ帰る。しかし、その時、「2週間は隔離させていただきます」という契約書にサインしてもらう。安倍総理は、決断力をもって、日本国民の命を守ってほしいと思います。
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