キャッシュレスの波を国ごとに分析すると面白いことがわかる。世界的に見ても、ポイントやクーポンなどのおまけをぶら下げてキャッシュレス化を迫る日本のような国はめずらしいのだ。(『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』岩田昭男)
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消費生活評論家。1952年生まれ。早稲田大学卒業。月刊誌記者などを経て独立。クレジットカード研究歴30年。電子マネー、デビットカード、共通ポイントなどにも詳しい。著書に「Suica一人勝ちの秘密」「信用力格差社会」「O2Oの衝撃」など。
お得感で釣る国は珍しい? キャッシュレス化への道は2つある
日本人は「ポイント」に釣られてキャッシュレスへ
先日、千葉県佐倉市の消費生活センターで「キャッシュレス時代のカード利用を考える」というタイトルで講演を行った。
新型コロナウイルスが猛威を振るう中で、感染を嫌がる少人数が欠席されたが、90人もの人(60歳以上の男女)が参加して私の話を熱心に聞いてくださり、とてもうれしかった。
じつは佐倉市にはこれまでも3回ほどお邪魔して、同じ消費生活センターで講演を行っている。しかし、「キャッシュレス」という広い立場で話したのは今回が初めてで、思わず力が入った。。
その講演の中で、聴衆の関心を引いたのが、日本のキャッシュレス比率がとてもわずかであること、それを挽回するために国が取った施策が「ポイント還元」というおまけ作戦であったこと、そして他の国では韓国だけがこうした戦法をとっているという点だ。
このおまけ作戦については、ある識者が以下のようなことを言っている。
キャッシュレス普及「2つのアプローチ」
世界を覆うキャッシュレスの波を国ごとに分析して見ると、面白いことが分かる。
フィンテックなどの新しい技術を使って利用者にキャッシュレスをアピールしていく国と、ポイントやクーポンなどのおまけをぶら下げてキャッシュレス化を迫る国の、2つのパターンがあることだ。
新しい技術で普及を目指すのは北欧など先進諸国に多いが、この方法で普及を図ろうとすると、地道な努力が必要になる。だから、時間がかかる。
一方、ポイントやクーポンによる射幸心を煽る方法は短期的には大きな成果を上げることがある。ただし、射幸心につられて使う人たちは熱しやすく冷めやすいので、長続きはしない。そのため、なかなかキャッシュレスが根付かない。
ポイントやクーポンでキャッシュレスを促進しようとしているのが、日本や韓国である。
韓国は、90年代経済危機に陥った時にIMFから経済のキャッシュレス化を強く求められたため、宝くじの実施や税金の控除によって非現金化を進めた。そして現在は90%を超える高いキャッシュレス比率を誇っている。
日本も韓国を真似て、ポイントというおまけで強引にキャッシュレス化を促進しようとしている。特に日本はポイント愛好家が多いので、うまくフィットするのではないかと思われている。
ただ世界的に見ると、ポイントや宝くじは極めて少数派で、ほとんどはフィンテックなどの新しい技術を使って促進を図っている。そちらの方が大多数と言って良いだろう。
フィンテックの使いやすさで入った人たちは、長く使い続ける傾向があるという。
ポイント主体は世界では珍しい
ただ今回のポイント還元事業を見る限り、日本はかなり健闘している。ほとんどの人がいちどはキャッシュレス決済を試みようとしており、関心は高い。
これには東アジア特有の勤勉な国民性、ポイント好きな国民性、計算に強い国民性というバックグランドがあるからだろう。
そういう意味では日本・韓国・中国では、他の地域と違ってポイントや宝くじが効果的というケースになるかもしれない。
しかし、ポイント還元ではもう1つ大きな問題がある。それは事業者の資金力がどこまで続くかという点である。
ソフトバンク、Yahoo!がバックにいる「PayPay」は、100億円キャンペーンを難なくこなした。
しかし、それを真似た「LINE」は300億円キャンペーンを打ったものの、たちまち挫折して、結局ソフトバンクの軍門に下った。
こうしたある意味ムダな投資が必要というのも、QRコード決済の特徴と言える。
ある調査によると、いまだに全体の7割が現金を使って買い物をしており、3割がキャッシュレス決済を始めたと言われている。
ただ都市部ではキャッシュレス比率はもっと高いと思えるが、地方では相変わらず現金の比率が高くなるだろうということは予想できる。
ただ3割が使うようになったということは、今まで2割弱だったのだから、このキャンペーンで10%は増えたので歓迎すべきかもしれない。
7月以降の利用は大きく減るのだろうか
なかでも注目したいのが、多くの人が電子マネーを使うようになったことである。
特にSuicaは一度使うと、0.2秒という決済速度の速さに手放せなくなってしまう。そのため、たとえポイントがつかなくても継続して使っている。
この辺は、店舗側の事情とはちょっと違うと思う。店舗は政府が手数料の援助をしてくれる限り続けようと思っているが、それがなくなった途端、儲けがなくなると言ってすぐにやめたがる。
いっさい儲けが出なくなって倒産しては元も子もないので、その判断は正解だろう。
一方、利用者はいちど0.2秒の速さで、決済ができるという体験を味わうと、現金払いに戻るのは難しいのではないだろうか。
そういう意味では、現在のポイント還元事業の期間に、できるだけ多くの人々に電子マネーのようなスピーディーな決済の体験をさせるのが最も効果的ではないかと思われる。
それにはクレジットカードやQRコードよりも電子マネーの方が良いだろう。
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『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』(2020年2月15日号)より一部抜粋
※タイトル、見出しはMONEY VOICE編集部による
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世の中すっかりカード社会になりましたが、知っているようで知らないのがクレジットカードの世界。とくにゴールドカードやプラチナカードなどの情報はベールに包まれたままですから、なかなかリーチできません。また、最近は電子マネーや共通ポイントも勢いがあり、それらが複雑に絡み合いますから、こちらの知識も必要になってきました。私は30年にわたってクレジットカードの動向をウォッチしてきました。その体験と知識を総動員して、このメルマガで読者の疑問、質問に答えていこうと思います。ポイントの三重取り、プラチナカード入会の近道、いま一番旬のカードを教えて、などカードに関する疑問にできるだけお答えします。