中国の「破竹の進撃」もこれまでか。新型肺炎対応が想起する終焉

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中国では、2月26日時点で感染者7万8000人、死者が2700人を超えた新型コロナウイルス感染症。中国指導部は、対策に血眼になっていますが、終息の気配はまだ感じられません。軍事アナリストで危機管理の専門家でもある小川和久さんは、主宰するメルマガ『NEWSを疑え!』で、人類の歴史上、感染症が影響を及ぼした例をあげ、「国が滅びるとき」という言葉をリアルに想起しています。

国が滅びるとき

新型肺炎(新型コロナウイルス感染症)で緊急事態に瀕している中国の様子を見ると、不謹慎かも知れませんが、「国が滅びるとき」という言葉が目の前をよぎっていきます。

歴史を振り返れば、疫病で国が衰亡に至ったモンゴル帝国のケースが思い出されます。チンギス・ハンによって建国されたモンゴル帝国は、わずかな年月の間にアジアから東ヨーロッパまでを席巻し、版図を広げます。

それが、まるで風船が萎むかのように瞬く間に勢いを失い、モンゴル民族による元王朝は明朝に取って代わられることになります。このときのモンゴルの勢力圏に、チャガタイ・ハン国など「ハン」のつく国々が残ったのは、ご存じのとおりです。

モンゴルの衰退の大きな原因として、1330年代に中国で始まり、1350年前後にヨーロッパと中東で猛威を振るい、世界で1億人以上の死者を出したとされるペスト(黒死病)があることは、よく知られていることです。ペストが、あたかも新型肺炎が人から人へと伝染しているように、モンゴルの勢力圏に蔓延し、内部抗争などで不安定になっていた帝国の基盤を揺るがしたとされます。

第5代皇帝クビライ・ハーンのとき、元は2度にわたって日本に軍事侵攻を企て、失敗に終わります。元寇と呼ばれる文永の役(1274年)と弘安の役(1281年)です。

両方の戦役とも、のちに神風と呼ばれることになる暴風雨のため、元軍は壊滅的な打撃を受け、そのときの沈没船と積み荷はいまなお北部九州の玄界灘付近で発見されているほどです。しかし、弘安の役のときは、疫病によって東路軍から3000人以上とも言われる死者が出て、戦闘力が大幅に低下した可能性があるようです。これを見ると、さしものモンゴル帝国も疫病には勝てず、疫病によって滅亡を早めたと言っても過言ではありません。

第1次世界大戦についても、1918年11月に終結したのは1918年から19年にかけて世界的に大流行し、推定で5000万人から1億人と言われる死者を出したインフルエンザ(スペイン風邪)によって、各国とも兵役適齢期の男性の数が決定的に減り、軍事力を維持できなくなったのが、ひとつの要因とする説があります。

2003年のSARSの大流行の時、中国人民解放軍の陸軍少将が私に「中国人だけを狙った生物戦」との懸念、つまり中国人しか罹らないウイルスが遺伝子操作によって生み出され、攻撃に使われた可能性に言及したことは、1月27日号で紹介しましたが、今回の新型肺炎では湖北省武漢の周辺で発生したウイルスが、2049年の建国100周年までに米国と肩を並べようとしている中国の足もとをすくい、その軍事・経済両面での「破竹の進撃」を阻む可能性さえ危惧されます。

それが現実となれば、そこで必ず生起する中国共産党内部の権力闘争によって習近平体制に終止符が打たれるばかりか、共産党が支配してきた中国の時代の終焉を告げる鐘が鳴り響くことになるかも知れません。新型肺炎対策に血眼になっている中国指導部の姿に、ある種のリアリティを感じるのは私だけでしょうか。(小川和久)

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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