成功者の証ともいえるタワーマンション。都心や湾岸地域の至る所に建つようになりました。そんなタワーマンションはもちろん物件価格もお高い。庶民にはなかなか手が届きませんが、富裕層がタワーマンションの高層階を好むのは、税制面でのメリットもあると、元国税調査官で作家の大村大次郎さんは語ります。自身のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』でその理由を明らかにしています。
富裕層がタワマンの「高層階」を好む本当の理由
前号まで、高級マンションは相続税、固定資産税などが安くなるということをご紹介してきました。今回からは、タワーマンションの「高層階」はさらに税金が安くなるということをご紹介したいと思います。
タワーマンションの高層階は、資産価値に比べたときの固定資産税が非常に安くなっています。固定資産税というのは、土地や建物などの「固定資産」にかかる税金です。マンションを所有している場合、マンション全体の固定資産税を、各所有者の所有面積割合に応じて、案分されることになっています。その按分割合には、これまで階層の違いは考慮されませんでした。
つまり、低層階であっても、高層階であっても、所有している面積に応じて、固定資産税が課せられるのです。が、ご存じのようにマンションの場合、低層階と高層階では、販売価格に大きな違いがあります。特にタワーマンションの高層階と低層階では、大幅な開きがあります。にもかかわらず、面積比では同じ固定資産税しかかかってこないのです。
しかも、固定資産税の評価額というのは、相続税の算出基準にもなっています。固定資産税の評価額が、マンションが相続資産となった場合の評価額の基準にもなるということです。つまり、高層階であっても、低層階であっても、同じマンションの同じ面積ならば、相続税の評価額は同じということになるのです。
高層階と低層階であれば、場合によっては倍近い価格差が生じることもあります。にもかかわらず、相続資産としての評価額は同じになるのです。ざっくり言えば、タワーマンションの高層階を買えば、固定資産税や相続税が低層階の半分になるということです。それを狙って金持ちたちは、高層階のマンションを競うようにして買っていたのです。
規制強化後もまだお得!ただし相続税には要注意
このタワーマンション高層階の節税策は、雑誌などでも紹介されました。税務当局もさすがにいつまでも手をこまねているわけにはいかなくなりました。明らかに不公平ですからね。
そのためタワーマンションの高層階は、2018年度から固定資産税の評価額が改正されました。20階以上のマンションの高層階に対しては、階を上がるごとに高くなるように設定されたのです。この改正により、最大で1階と最上階の差は、10数%程度になりました。
ただ、この程度の改正では、まだタワーマンションの実態からはかけ離れているといえます。ほとんどのタワーマンションで、高層階と低層階の価格の違いは、わずか10数%ではすみません。マンションによっては、2倍以上の価格差が生じる場合もあります。50階建てマンションの50階と1階を比較して、価格差が10%などということはあり得ないといえます。
またこの新しい課税方法が適用されるのは、2017年4月以降に販売されるマンションです。それ以前に販売されたものは、以前のままの固定資産税が適用されるのです。
これを見ても、タワーマンションの高層階というのは、節税アイテムとしてはまだまだ使えそうですね。ただし、このタワーマンション高層階を利用した「相続税」の節税には非常な危険もはらんでいます。
次回は、タワーマンション高層階を使った相続税節税の仕組みと危険性についてご紹介したいと思います。
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