待機児童26.5万人と推計 来秋「9月入学」で16倍に―英大教授ら研究チーム

2020.05.20
0
by 時事通信

神社の駐車場を転貸して整備した認可保育所の園庭で遊ぶ子どもたち=2016年6月、東京都荒川区

神社の駐車場を転貸して整備した認可保育所の園庭で遊ぶ子どもたち=2016年6月、東京都荒川区

 【ロンドン時事】新型コロナウイルス感染拡大による休校長期化を踏まえて日本で来年から「9月入学」を導入した場合、待機児童が全国で約26万5000人に上ると推計されることが明らかになった。2019年4月1日時点の待機児童数(1万6772人)の約16倍となる。英オックスフォード大の苅谷剛彦教授らの研究チームが19日、9月入学の影響を分析した報告書を公表した。
 政府は「有力な選択肢の一つだ」(安倍晋三首相)として9月入学を本格的に検討している。各政党や地方自治体などからも賛否両論が上がっており、調査結果は議論に一石を投じそうだ。
 調査は21年9月の入学とし、14年4月2日から15年9月1日までの17カ月間に生まれた児童が新小学1年生となる前提で推計した。この学年は現行制度よりも約42万人増えるが、21年4月からの5カ月間、就学前児童が保育所にとどまることにもなり、追加の受け皿が必要になる。ただ、22年以降は解消が見込まれるという。
 推計によると、都道府県別では、保育所利用希望者数に対する待機児童の割合が滋賀県で16.1%、兵庫県で14.4%に上る。全国平均は9.1%。待機児童が新たに生じないのは長野など5県のみだった。
 一方、小学校低学年を対象とする放課後学童保育クラブでも、9月入学の新1年生の増加に伴い、約18万5000人の待機児童が生じる見通し。現在の10倍以上となり、保育所同様に受け皿の整備が課題となる。
 教員も約2万8000人が不足する。地方財政における教育費は約2640億円の増加が必要となり、この学年の義務教育終了までに総額2兆円以上の支出増が見込まれるという。
 苅谷教授は「私たちは賛成の立場でも反対の立場でもない。冷静でエビデンス(証拠)に基づく議論の呼び水として、研究プロジェクトを立ち上げた」としている。苅谷氏は東大教授を経て、現在はオックスフォード大の社会学科と現代日本研究所で教授を務めており、教育学の第一人者として知られる。(2020/05/20-07:11)

print

人気のオススメ記事