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リモート後進国に落ちた日本。なぜオンライン診療・オンライン教育が進まない?=原彰宏

コロナ感染拡大によって、世界ではオンライン診療・オンライン教育の普及が加速しています。しかし日本ではまったく進んでいません。少し前進しても、コロナ終息までの時限措置という位置付けです。リモート社会構築においては、日本はもう何周もの周回遅れであることを本気で自覚したほうが良いのではないでしょうか。(『らぽーる・マガジン』原彰宏)

※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2020年5月18日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

世界では「オンライン診療」普及が加速

パソコンやスマートフォンなどで医師の診断を受ける「オンライン診療」が世界で急増していると、日経新聞が報じています。

急増した背景には、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに病院へ通うのが難しくなった患者が増えたことで、米国などがオンライン診療に医療保険を本格適用したためだと言われています。

米国は2020年の診療回数が感染拡大前の予想の30倍近くに増える見通しを示しています。調査会社フォレスター・リサーチによると、米国の今年のオンライン診療は10億回となりそうだとのことです。

これは、新型コロナウイルス感染拡大前の予想(約3,600万回)の約28倍となります。

米カイザー・ファミリー財団によると、米国の外来診療におけるオンライン比率は2018年で2.4%でしたので、これが2020年は大幅に増える見通しとなるのだそうです。

新型コロナウイルス事情によるオンライン診療増加の要因ですが、新型コロナウイルス対策に集中するため、ニューヨーク市など多くの病院は緊急以外の外来患者の受け入れを中止しましたことで、緊急措置で米政府は3月、高齢者向けの公的医療保険「メディケア」でオンライン診療の保険適用範囲を大きく拡大しました。

過疎地のみといった従来の条件を撤廃し、全米で受けられるようにしました。

州政府も同時期に民間保険会社に保険でまかなうよう指示をしたことで、コロナをきっかけに保険適用の範囲が一気に広がったとのことです。

英国は、国民医療制度(NHS)が英企業、バビロン・ヘルスの開発したオンライン診療アプリを保険適用しています。

このオンライン診療アプリには、人工知能(AI)による症状の分析とオンライン診療の2つの機能があり、軽度の症状の診察はAIが医師を代替し、本格的な診療や薬の処方はオンライン診療で対応します。

国民医療制度(NHS)加入者は患者負担が原則無料です。

英で家庭医と呼ばれるかかり付け医は、患者の対応に忙殺されがちで、アプリのAI機能とオンライン診療によって家庭医の負担を軽減する狙いがあります。

中国も2019年夏にオンライン診療を公的医療保険の対象とする方針を打ち出しています。

医師不足の中国は、もともとオンライン診療のニーズが強かったと見られます。

世界保健機関(WHO)によると中国の人口1万人あたりの医師数は2016年時点で約19人と、米国(26人)や日本(24人)より少ない状況です。

調査会社の前瞻産業研究院によると、春節(旧正月)期間におけるオンライン診療アプリの利用者数は、前年の同じ時期より約3割増えたとあります。

代表的なアプリ「平安好医生」の登録者数は3億人を超え、診療回数は1日約73万回に達しています。

記事では、顔に湿疹ができてオンライン診療を受けた広東省広州市の女性(27)のコメントが紹介されています。

「命に関わらない病気ならオンライン診療がよい……」

患部の写真を医師に送って症状を伝え、代金は1元(約15円)。病院だと2~3時間は必要となるはずの所要時間は約20分だったとのことです。実に効率的だと言えそうです。

オンライン診療サービスの数は、米国「テラドック」運営のもので4,300万人のユーザ数で、加入保険にもよりますが、1回の費用は49ドル以下、日本円では5,000円ぐいらいですかね。

中国「平安好医生」のユーザー数は3億1,520万人で、費用は年間約3,000円だそうです。

英国「バビロンGPアットハンド」のユーザー数は500万人以上で、国民医療制度(NHS)加入者は原則無料となっています。

Next: 日本の事情はどうでしょう。初診でのオンライン診療を4月から解禁した――

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