出でよ、5000頭の龍。台湾のお寺みたいな埼玉の「聖天宮」で願い事を

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2018/04/02

台湾へ旅行したとき、街中にお寺のような建物がそこかしこにあることに気づきました。それは漢民族が土着的・伝統的に信仰する道教の「廟(びょう)」と呼ばれる宗教施設で、外観などの装飾や色が豪華で派手という特徴があります。そんな庶民信仰のための廟が、実は日本の埼玉県内にもあることをご存知でしょうか?

5000頭の龍が集う場所、埼玉・坂戸市にある台湾風の廟「聖天宮」へ

聖天宮天門

文化庁ホームページに掲載されている宗教年鑑(平成29年版)によると、日本国内に存在する宗教関連の建物(社寺教会等)は、21万6927にものぼるそうです。寺院にだけ限定しても、その数は7万7256というのですから、相当な数です。今回は、そんな数ある寺院の中でも、“豪華絢爛”という単語が特に似合う寺院をご紹介したいと思います。

鐘楼棟
前殿内部

その寺院は、埼玉県坂戸市にある聖天宮(せいてんきゅう)という寺院です。聖天宮は、中国や台湾などの漢民族の三大宗教の1つである「道教」のお宮(廟)。県道ですらない道沿いに建てられた、この異彩を放つ建物は、通り過ぎた後に思わず引き返してしまうほどの煌びやかな造りで目を引きます。

聖天宮は、台湾出身の康國典大法師(こうこくてんだいほうし)という方が、大病から回復した事に深謝し、ご本尊としている三清道祖(さんせいどうそ)の「天からの声によって開廟(かいびょう)したそうです。

本殿

台湾から一流の宮大工を呼び寄せた上で、昭和56(1981)年から15年の歳月をかけて建てたというこの建物は、日本における道教の廟の中で最大級の規模を誇り、外観の派手さばかりでなく、何気なく配置されている建築要素の1つ1つが、非常に見応えのある造りをしています。

例えば、入口から、天門、前殿、本殿と並ぶ建物のうち、前殿と本殿の外柱として設置されている複数の石柱は、それぞれ、その高さが5mもある上に1つの石から仕立てられており、その外周には、透かし彫りによる見事な龍の彫刻が施されています。

龍の透かし彫りがほどこされた石柱。観音山で採れる観音石で作られており、技術の高さが伺える

また、中庭に安置されている九龍網(きゅうりゅうもう)と称される彫刻は、1枚の岩から九頭の龍を掘り出している精巧なものでした。さらに、石彫だけでなく、建物自体も精巧な造りをしています。

例えば本殿の天井は、日本の寺院ではまず見かけないような渦を巻くような組み木造りとなっていました。こちらも、その派手な色使いに目が行きがちですが、建築物としても非常に見応えのある造りです。


九龍網。中央の龍は5つの爪を持つ最強の龍なのだとか
本殿天井。渦を巻くような組み木造りは、釘を一本も使用していない

前殿(アイキャッチの写真)の左右には、シンメトリーな配置で、鐘楼棟(正面から見て右側)と、鼓楼棟(正面から見て左側)が建てられており、それぞれ、上にのぼる事ができます。

内部には、機械仕掛けの鐘付き棒が備えられており、午後3時になると鐘と太鼓の双方が同時に打ち鳴らされるようになっています。かなりの音量なので、打ち鳴らされる際に各棟内部に居る場合には、耳を抑える等の対策をした方が良いでしょう。

鐘楼
鼓楼

さて、このように、豪華絢爛な作りの聖天宮ですが、写真を見ても判るように、いたるところに龍の装飾が施されています。その数は、大小合わせて5000頭と言われています。

例えは変ですが、実際に千本の手がある千手観音像というのは見た事がありませんが、こちらのお宮には、実際に5000頭以上の龍が居そうな雰囲気があります。お時間のある方は、数を数える事にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

ご本尊の三清道祖。霊寶天尊(左)、元始天尊(中央)、道徳天尊(右)※許可を得て撮影

こちらの聖天宮、季節毎のイベントや、花の見ごろがあるそうで、3月下旬から4月頭には、枝垂れ桜が見ごろを迎えるようです。また、5月20日(日)には、武術太極拳の競技会も行われるとのこと。

豪華な建物を背景に行われる太極拳、きっと映画の一場面を目の当たりにしているような光景ではないかと思います。都内からもほど近い台湾的雰囲気を味わいつつ、各種イベントを見に行ってみてはいかがでしょうか。

埼玉県坂戸市塚越51−1
Tel: 049-281-1161
最寄り駅:東武東上線「若葉駅」東口から東武バスで戸宮交差点前バス停下車、徒歩300m 
拝観料:大人500円
詳細サイト

  • image by:梅原慎治
  • ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
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埼玉県生まれ、都内在住のツーリングライター。主に関東近郊を走り周り、美味しい物や良い景色などを見つけて楽しんでいる。

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