以前掲載の「キレるお年寄りが増えた。家族みんなが幸せになれる対処法は?」等の記事でもお伝えしているとおり、ここ数年、各メディアでたびたび「激昂する高齢者」が取り上げられ話題となっています。彼らはなぜ高圧的な態度を取ってしまうのでしょうか。今回の無料メルマガ『人間をとことん考える(人間論)』では著者の小原一将さんが、「自責」と「他責」の観点からこの問題を考察しています。
人の行動を見て自分の行動を見直そう
大手チェーンのファミリーレストランに行った時に見かけた出来事から、自分の行動を見直すきっかけにしていきたい。
そこは少し値段の高めの落ち着いた雰囲気のあるファミリーレストランだった。学生が騒いでいたり、ガヤガヤしていることもなく比較的年齢層の高い場所だ。私も食事をしてコーヒーを飲みながらメールを返したりで使わせてもらっている。
その日、私の目の前に座った60代くらいの男性が大声を出している場面に遭遇した。どうもスマホのクーポンを提示して使おうとしたのだが、その店では使えないクーポンのためにレジで再提示したらその分割引にするという話らしい。
それにおじさんはブチギレた。「もう一回画面を見せるなんてあり得ない、この画面を出すのにどれだけの時間と苦労がかかると思っているのか」と若い女性店員に乱暴な言葉をぶつけていた。
画面を出す苦労はどうでも良いが、再提示させるのは確かに手間ではある。ただ、そこまで怒るほどのこともでもないだろう。
それからそのおじさんは、他の店ではこんなことをされたことはない、この店の教育はどうなっているのか、私にこんな手間をかけさせるなんて店として失格だと、大人しい店員に怒り続けた。
別のファミリーレストランでも似たような出来事に遭遇した。昼時に老夫婦が訪れていたのだが、そこはタッチパネルで全てを注文する。当然だが、その老夫婦は操作ができない。「こんなものは使いこなせない、操作ができない、注文ができないじゃないか」と店員に言う。
私でさえも操作に一瞬戸惑うことがあるので、お年寄りにとって注文のハードルがかなり高いのは分かる。
ただ、なぜあれほどまでに横柄で高圧的になるのだろうか。私だけがたまたまかもしれないが、若者が店の中で怒るより、年配の方が怒っていることに遭遇することが多い。
店の接客やその人の態度に怒りを示すのなら分からなくはないが、店のルールや決まり事についてアルバイトの子に文句を言っても何の意味もないだろう。しかも多くの場合、店員は平身低頭謝っている。
自分が不利益を被るサービスや決まりを押し付けられると「悪い」と考えるのだろうか。
それについては私は完全に間違っていると思っている。その店はそういったサービスを提供している場所なのだから、行かなければ良いだけだ。店を選ぶ権利は私たちにあるし、サービスが良くなければその店の売り上げは上がらない。
券売機でチケットを買って商品をもらう飲食店でも同じようなことがあった。老人の5人組の団体がやってきて狭い店内の入り口で、券売機を前に揉めている。「券売機の使い方が分からない、こんな不親切な店はあり得ない、早く来てこれを操作してくれ」と言いたい放題だった。
申し訳ないが、言うことを全て聞いてもらいたいのであれば、フルサービスの飲食店に入るべきだ。その店はそのようなサービスの店なので、店が悪いとは全く思わない。
これらのことから学ぶとすると、人は油断すると自責ではなく他責にしてしまうということだろう。偉そうに上記のようなことを書いているが、私も相手は悪くないのに、自分の責任ではなく相手の責任にしてしまい反省することが多い。
心の余裕がなかったり、疲れていたり、無意識だったりすると、「私は悪くない」というスタート地点から物事を考えてしまう場合がある。それが絶対にダメだというわけではないが、多くの場合、有益なことにはならないのではないだろうか。
器が大きい人や成功している人は、考え方や言動に余裕がある。常に相手のことを気遣い、自分を主張しすぎずバランス感覚を大事にしているように感じる。
年配の方たちにとって暮らしにくい世の中と感じることはあるだろうが、これからの国を背負う若者たちが頑張って作り上げているものなので暖かい目で見てもらえればと思っている。
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