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公的年金運用「17.7兆円赤字」四半期で過去最悪。この20年で57.5兆円の黒字も安心できぬワケ

私たちの年金を管理運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は3日、2019年度の運用実績が8兆2,831億円の赤字となったことを発表。2001年度に運用を開始して以来、リーマン・ショックの影響を受けた09年度の赤字9.3兆円に次ぐ過去2番目の損失額となった。

GPIFは私たち国民から預かった年金積立金を投資に回して増やし、年金制度を維持することを目的としている。2001年の運用開始からトータルで見れば資産は増加しているが、コロナウイルス感染拡大の影響を受けた株価の急落により、昨年度は大きく資産を減らしてしまったことになる。

GPIFは同時に2020年1〜3月期の運用成績も発表しており、それによると四半期ベースでは過去最大の損失額となる17兆円7,072億円の赤字となっている。19年12月末時点では9兆4,241億円の黒字だったことを考えると、この四半期でその黒字を一気に溶かして赤字に転落してしまった状況だ。コロナ禍とそれに伴う株価大暴落は、まさにリーマン級かそれ以上の危機だったと言えるだろう。

GPIF巨額損失の報道で「私たちの年金がなくなる」という不安の声が多く聞かれるが、2001年度以降の累積収益では+57.5兆円と資産を増やしており、これを根拠に「そんな心配は要らない」との論調も同じように多く見られる。また4〜6月には国内外の株式相場が持ち直しており、運用成績も黒字に転じることが予想される。

出典:GPIF

出典:GPIF

とはいえ、累積収益が黒字だからと言って手放しで安心することはできない。いよいよ年金支給の財源が枯渇するとなれば、このGPIFから資産を取り崩す必要が出てくる。今まで市場を買い支えてきたGPIFが売りに転じるとなれば、さらなる株価暴落の引き金ともなりかねない。そうなればさらにGPIFの収支は悪化し、私たちの老後も安心とは言い切れなくなる。

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「老後2000万円」不足問題が騒がれて久しいが、日本の経済状況や財政がさらに悪化していることは明確だ。いよいよ自助努力が必須の社会が到来しており、老後を生き抜くためには国に頼らずに資産管理を徹底することが重要だと言えるだろう。

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Source:年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)
Image by:image by:Youtube(GPIF channel)

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