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中国で「無人タクシー」が日常風景へ。なぜ日本の自動運転技術は勝てない?=牧野武文

中国は今まさに自動運転車の大量導入前夜にあり、あと10年で100万台の自動タクシーを走らせる計画まで出てきています。なぜここまで進んだのか?その要因と今後の展望を解説します。(『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』牧野武文)

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※本記事は有料メルマガ『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』2020年8月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:牧野武文(まきの たけふみ)
ITジャーナリスト、フリーライター。著書に『Googleの正体』『論語なう』『任天堂ノスタルジー横井軍平とその時代』など。中国のIT事情を解説するブログ「中華IT最新事情」の発行人を務める。

中国の自動運転車は「大量導入前夜」

今回は、中国で進む自動運転の現状についてご紹介します。

日本でもサービスを展開する滴滴出向(ディディチューシン)が、上海でロボタクシーの試験営業を始めました。すでに、長沙市などで百度がロボタクシーの試験営業を始めていますが、滴滴出向は同時に「2030年までに100万台のロボタクシー」を全国に投入すると宣言しています。

百度(バイドゥ)は、モニターによる試験営業の段階を終え、“dutaxi”という専用アプリを使えば、誰でも利用できる「全面開放」を行なっています。滴滴が参入したことで、百度のロボタクシーにも動きがあることでしょう。

一気に、本格導入前夜のような盛り上がりになってきました。

この他、百度の自動運転プラットフォーム「アポロ」を利用した8人乗りのバスはすでに公園や雄安新区などでシャトルバス、巡回バスとして利用されています。また、長沙市ではバス路線に10台のロボバスを投入して、乗客を乗せて走っています。

また、宅配便などを配送する無人配送車は、すでに各都市の固定路線を中心に運用が始まっています。

つまり、そろそろ「実証実験」の段階を終え、実戦投入のフェーズに入ろうとしているのです。メディアの報道によると、各領域での自動運転の導入はこの1~2年で大きく進み、5年以内には大量投入が始まると専門家は見ているようです。

今回は、中国の自動運転がどのくらいの段階にまできているのかをご紹介します。

2030年までに100万台の「ロボタクシー」投入へ

中国が、自動運転車大量投入の前夜を迎えています。滴滴出行は、上海でロボタクシーの試験営業を始めました。エリア内では、運転手は操作せず、すべてを自動運転するというものです。

上海の嘉定区の10km四方ぐらいのエリア限定で、事前予約をしたモニターを1日に30組程度乗せています。現在は、ほとんどがメディア関係者で、なかなか予約が取れないそうです。

このエリアは、上海の虹橋空港の北側で、F1が開催される上海国際サーキットのあるエリアです。東京近辺でいえば、幕張メッセ地区のような地域です。

もちろん、始めたばかりですから、メディアはいろいろとおもしろおかしく報道しています。ロボタクシーといっても無人ではなく、運転席には運転安全員が、助手席にはエンジニアが同乗しています。自動運転が難しい状況では、運転安全員が手動運転を行いますし、常にエンジニアがシステムのモニターを行なっています。

メディアでは、出発に戸惑って数分間止まったままだったとか、自動運転車は遠回りをしてでも右折ばかりするなどと報道されています。中国は右側通行なので、右折は簡単ですが、左折は対向車に注意しなければならず難易度が高い運転になります。そこで、システムはミスを起こしづらい右折を優先してルートを決めているのではないかというのです。

あるいは、脇道から侵入しようとする車を見つけると停止してしまいお見合い状態になるとか、速度の遅いオート三輪があっても抜かそうとせずに、後ろを徐行しながら走るとか、さまざまな「まだ運転がこなれていない」状況であることは確かなようです。

とは言え、この試験区域には、地下鉄の駅もあり、ホテルなどもあります。走るのは専用道路ではなく一般道で、上海中心地ほど交通量は多くなくても、一般車両が走っている地域です。

滴滴出行は、このロボタクシー投入に強気で、2030年までに100万台のロボタクシーを投入すると宣言しています。

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