以前掲載の「UberEatsでは無理。世界的エンジニアが開発した飲食店を救う試み」でもお伝えしたとおり、コロナ禍にあえぐ飲食店を救済する新しいウェブサービス「OwnPlate」(オウンプレート)を開発した、世界的エンジニアの中島聡さん。今回中島さんは自身のメルマガ『週刊 Life is beautiful』で、そのサービスで得られたフィードバックや飲食店業界を取り巻く問題を鑑みつつある際に閃いた、個人経営の飲食店を守る新しいビジネスプランを披露しています。
プロフィール:中島聡(なかじま・さとし)
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。
コロナ後の世界:新しい形の飲食業
私がビジネスのアイデアを考える場合に、まず最初に考えるのは、「潜在ニーズ」です。「潜在」という言葉が付いているのは、何らかの問題がありながらも、それに対する明確な解決策が提示されていないことを示します。
飲食店業界を取り巻く潜在ニーズを列挙すると、
- 個人経営の飲食業の経営が、新型コロナのために一気に厳しくなった
- 個人経営の飲食業はITの恩恵を受けることが出来ていない
- チェーン店ばかりになってしまうと、食のバラエティが減ってしまう
- レストランで食べることには、(新型コロナに限らず)様々な感染リスクが伴う
- ドライブスルーは便利だけど、提供できているのはファーストフードだけ
- 電話でテイクアウトの注文をするのは不便(客と店の両方にとって)
- テイクアウトの注文を取りに来ない客がいると、丸損になる
- 既存のレストランは、テイクアウトビジネスに最適化されていない
- 駐車場スペースが大量に必要(米国の場合)
- (レストランで)注文してから食べ物が来るまでの時間が無駄(客と店の両方にとって)
- 飲食業への投資は、チェーン店以外は投資家にとって魅力的ではない
- 資金がないと飲食業が始められない
- ブランド力がないと、テイクアウト・ビジネスをしても客が来ない
- 注文を受ける部分だけIT化しても、キッチンのワークフローと相性が悪い
などがあります。
4月にスタートしたOwnPlateプロジェクトは、この中の「個人経営の飲食業はITの恩恵を受けることが出来ていない」という潜在ニーズに答えようとするものですが、実際に使ったレストランからは「注文が来ても気がつかないことがある」「サイトへの導線がないので、注文が来ない」「経営が厳しくてそれどころじゃない」などの貴重なフィードバックをいただいています。
そんなフィードバックも含めて、上に列挙した潜在ニーズのことを考えているうちに、一つのビジネスプランが徐々に浮かび上がって来ました。まだまだ考えるべきことは沢山ありますが、大まかなアイデアを書くと、
- 小規模なキッチンだけのレストランを数件集めたレストラン・モールを作る
- モールごとにオーナー(投資家)がいる、フランチャイズモデル
- それぞれのレストランは独立したビジネス(Uberのドライバーのような存在)
- OwnPlateを活用して、全てはオンラインで注文+支払い(現地での注文や支払いはなし)
- モールに顧客用の駐車場はなく、「待つ場所」や「食べる場所」は提供しない
- モールにはドライブスルー型のピックアップ・ウィンドウが一つだけあり、これを共有
- モールの場所は、都心ではなく、住宅地に隣接した商業地区
というイメージです。
このビジネスのステーク・ホルダーは、
- 本部(仮名:OwnPlate株式会社)
- (モールの)投資家
- オーナー・シェフ
の3者です。
本部は、
- モールのデザイン(キッチンも含む)
- オンライン・オーダー・システム
- キッチン・オペレーション・システム
- 課金
- マーケティング
を提供し、投資家は、
- モールの設置場所
- モールの建設資金
を提供します。
結果として、オーナー・シェフは、
- 食材の手配
- スタッフの手配
- 美味しい料理の提供
に専念が出来ます。