トランプの本気。米国の香港自治法が中国共産党と習近平の首を締め上げるワケ

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激しさを増すアメリカと中国の対立。「米中戦争」は、武力ではなく金融で勝負がつくのかもしれません。メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』の著者で、人気コンサルタントの吉田繁治さんは、アメリカとスイスが、中国マネーの封じ込めに出たと指摘。金融という「武器」は、習近平にとって核兵器より強力な脅威になると分析しています。

「犠牲を作ることができる国」の三峡ダム

7月に書いた、中国の三峡ダムのニュースが日本でも出るようになっています。豪雨で水嵩が増し、決壊の恐れがあるというものです。しかし中国政府の方針は「小の虫を殺し、大の虫を生かす」です。下流域の大都市、重慶、武漢、南京、上海を生かすためダムに溜まるより多い5万トン/毎秒以上の放流(最大11万トン/毎秒)しています。

北省や四川省などでは洪水を起こし、下流の大都市を救う(人口4億人)。中国では日本と違い、政治的に犠牲を作ることができるので、ダムの決壊は避けることができるかもしれません(当方の、新しい判断)。世界のGDPが5~10%減るなかで、中国の実質GDPは、前年比3.2%とは言う(20年4-6期)。過去のトレンドである6%成長からの落ち込みですから感覚的には-3%でしょう。

米国が中国に課した「香港自治法」の威力

米国の香港自治法は、米国が中国の金融を封じ込める強力な武器です。中国は、金融を自由化していません。海外から元を買う(元高になる)ことに制限はありませんが、元をドルや円に交換する(元安になる)には制限があります。

【人民元は新興国通貨】

人民元は、ハードカレンシーではなく、信用の低い「新興国通貨」です。ハードカレンシーは、いつでも自由にいくらでも外貨に交換できる通貨です。ハードカレンシーは銀行が準備しているからです。ドル、ユーロ、円、スイスフラン、カナダドル、豪州ドルです。

香港は、銀行が「ドルペッグ制」をとっています。ドルに香港ドルを固定するものです(現在1香港ドルは13.71円)。香港ドルは、米ドルと同じように変動しています。香港の銀行のドル準備(約20兆円)でドルペッグ制が維持されてきたのです。

【香港ドルの媒介】

人民元は香港ドルと交換し、香港ドルがドルペッグであることで、国際流通性を確保していました。

香港自治法は、香港の自治を阻害しているとしてリストアップした共産党の要人のドル預金を凍結します。それだけではない。その要人が預金をもつ香港、中国と日本を含む世界の銀行の国際取引(送受金と貸付、買い入れ)を停止するものです。

銀行間の取引が停止されれば、銀行業は成立しません。香港自治法は、議会が適用すれば、銀行の取引停止、つまり銀行封鎖に至るものです。米国議会は、満場一致でこの法を成立させています。

スイスのカシス外相は、「スイスの銀行には、中国共産党幹部の預金が上位100人で7.8兆元(120兆円:1元=15.4円)はある」と公開しました。1人当たりで1.2兆円という巨額なマネーが、スイスの銀行に逃げていることが、初めて分かりました(Yahoo Japanなど)。 永世中立国を奉じ、米国に従わないこともあるスイスでは、「人権侵害をしている政府幹部が預金している銀行は、取引停止にする」という法の国民投票が、20年秋に行われます。この法が成立すると、国家安全法で、香港の人権を阻害している中国共産党幹部の預金は、凍結され、その銀行も取引停止になります。SWIFT(国際的な全銀手順:BISが管理している)の国際的な決済網から外されるのです。

これは預金者が、120兆円の自分の預金を動かせなくなることを意味しますから、大きな元安の要素になります。金融ではスイスは、基軸通貨国の米国に協調します。その点、日本の銀行(特に日銀)と同じです。

米国もスイスとは別に、香港自治法の適用で、中国人要人のドル預金を凍結しようとしています。金額はいくらか分からない。スイスへの預金120兆円より、数倍多いはずです。

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