fbpx

シャオミの「雷軍流」が中国を鍛え上げた。なぜ日本の家電は敗れた?=牧野武文

中国のスマホメーカー「小米(シャオミ)」はものづくりに革命をもたらしたと言っても過言ではありません。何が革新的だったのか。日本メーカーが後れを取った理由とともに解説します。(『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』牧野武文)

【関連】中国で「無人タクシー」が日常風景へ。なぜ日本の自動運転技術は勝てない?=牧野武文

【関連】日本も追従する?中国で地方都市・農村向けビジネスが大流行しているワケ=牧野武文

※本記事は有料メルマガ『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』2020年9月7日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:牧野武文(まきの たけふみ)
ITジャーナリスト、フリーライター。著書に『Googleの正体』『論語なう』『任天堂ノスタルジー横井軍平とその時代』など。中国のIT事情を解説するブログ「中華IT最新事情」の発行人を務める。

シャオミ創業者「デジタル界の無印良品になりたい」

今回は、中国のスマートフォンメーカー「小米(シャオミ)」の創業者、雷軍(レイ・ジュン)についてご紹介します。

シャオミというと、2011年の「小米1」の発売時に、黒いTシャツ、ブルージーンズ姿で登場した雷軍が、スティーブ・ジョブズばりのプレゼンテーションを行ったことから、日本では「スティーブ・ジョブズのそっくりさんが、iPhoneのパチもんを中国で売り出している」と面白おかしく報道されたことを覚えている方も多いでしょう。

しかし、シャオミは、中国のものづくりに大きな変革を起こしました。現在では、白物家電製品の製造にまで乗り出して、炊飯器やテレビなどでもヒット製品を生み出しています。また、インドにも進出をし、早くから現地生産を行っているため、昨今の中国製品排斥の動きからも、インドではシャオミ製品は準国産品とみなされ、大きな打撃は受けていません。

シャオミのものづくりの起点は、消費者目線というものです。これを言葉だけ、スローガンだけでなく、開発手法にまで落とし込んだことがシャオミの大きな功績です。

雷軍は、そのシャオミ独特の手法を編み出すまでに、日本の無印良品のものづくりをよく研究し、たびたび「デジタル界の無印良品になりたい」と口にしています。

創業者の雷軍は、いったいどこでこのような手法を学んだのでしょうか。学生時代典型的なハッカーだった雷軍は、夢を持ち続けてきました。現実の企業運営という厳しさに直面をしても、その夢を捨てずに、シャオミで実現してきました。

今回は、シャオミのものづくりと、創業者の雷軍についてご紹介します。

白物家電のデザインに革命をもたらした

シャオミの日本での知名度もだいぶ上がってきました。Xiaomi Japanが設立されて、スマートフォンやスマートウォッチ、炊飯器などの日本販売を始めているからです。

特に、日本でも発売が予定されているスマートウォッチ「Miスマートバンド5」は、OLEDを使いながら、4,490円と手頃な価格で、うまくすると、中国本国と同じようにヒット商品になる可能性があります。日本では、中国製というとアレルギー反応を起こす人がまだまだ多いことや、テック好きではない人の間でのシャオミの知名度はまだ高くないことが障害になりますが、デジタルデバイスとしては買って損はないと思います。

また、中国ではドラえもんとコラボした「Mi10青春版ドラえもん限定版」が発売され話題になっています。背面や壁紙、アイコンにドラえもんをあしらったスマホで、子どもたちは目の色を変えて欲しがります。しかも、シャオミらしいのは、このようなコラボモデルでも手を抜かず、OLED、50倍ズーム、大容量バッテリーを搭載したミドルハイクラスのスペックになっていることです。これが2,799元(約4万3,000円)という価格なのですから、子どもだけでなく、大人でも買う人が出てくるでしょう。日本でも発売したら、かなりの数が売れるのではないでしょうか。

また、シャオミは炊飯器「米家」を日本でも発売していて、中国では発売後2年で100万台が売れるというヒットになっています。この「米家」の開発責任者は、IH炊飯器「おどり炊き」を開発した三洋電機の内藤毅氏です。三洋電機を退職後、中国でIH炊飯器を開発したのです。

この後継機種の炊飯器が日本でも販売されていますが、デザインが素晴らしい。シャオミは白物家電のデザインに革命を起こしたと言っても過言ではありません。

見ていただければわかりますが、本体は白一色で、ボタンが3つしかありません。「予約」「開始」「取消」の3つだけです。しかも白いボタンなので、目立ちません。時刻表示は大きめのLED表示ですが、本体のカバー下に埋め込まれているため、通常時は見えなくなります。つまり、使っていないときはほとんど白一色の箱になってしまうのです。

日本の家電製品は、多くが大量のボタンをつけ、大きな液晶表示がさまざまな情報を表示します。一般的な炊飯器の液晶画面には、時刻表示の他に「もちもち」「ふっくら」「玄米」「おかゆ」などの文字が常に表示されています。

最近では、このような過剰なボタン、過剰な表示をうるさく感じる人も増えていますが、日本の白物家電のデザインレベルはなかなか向上しません。

日本の白物家電は、高度成長期に10社近い大手メーカーが競い合う形で成長してきたため、売り場での競争が激しかったのです。売り場で目立たないことには埋もれてしまいます。そこで本体に、「こんな機能」「あんな機能」のボタンをつけたり、大きな表示をつけたりして、一目見て多機能であることがわかるようなデザインが求められました。それが、ゴテゴテしたうるさいデザインになっているのです。

では、米家は単機能なのかというと、そんなことはありません。お米、おかゆ、玄米はもちろんのこと、ケーキ、ヨーグルト、蒸し煮なども作ることができます。このような操作は、すべて専用アプリの中から行うのです。専用アプリには、「米家」で作れるさまざまな料理のレシピなども読めるようになっています。

つまり、本体のデザインはすっきりさせて、多機能はスマホから操作をする。これにより、モダンなキッチンに置いても、生活感がでない新しい白物家電の世界を追求しています。

Next: テレビは「音声操作」が基本。中国のものづくりをがらっと変えた

1 2 3 4
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー