ヤクザまがいの言いがかりも。麻生氏が岸田氏を支援しなかった訳

arata20200917
 

14日の自民党総裁選でシナリオ通りの圧勝を果たし、16日の臨時国会で第99代首相に選出された菅義偉氏。菅新総理誕生にあたっては、二階俊博氏と麻生太郎氏が果たした役割が大きいことは二人の留任を見ても明らかですが、麻生氏自身の心中には複雑な感情が渦巻いているようです。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、期待をかけていたはずの岸田文雄氏を切り捨てざるを得なかった麻生派の事情を解説。そこには政治の世界で生きる者以外には理解し難い「派閥の論理」や「力学」が深く絡んでいました。

麻生氏が岸田氏を支援しなかった真の理由

はなから盛り上がりようもない自民党総裁選が終わり、予定通り、新総裁となった菅義偉氏が新総理大臣に国会で選出された。

安倍前首相、麻生副総理が「絶対許さない」(田崎史郎氏)という石破茂氏は、岸田文雄氏へ“お助け票”が流れたせいか、最下位に沈んだ。政治生命が断たれたかのように言う向きもあるが、これだけ一人が陰湿極まるイジメにあったのだ。判官びいきの国民性が刺激され、石破氏にとってはプラス面もあるだろう。

この党においては、派閥トップの談合で流れが決まるや、どの派も「一致結束箱弁当」と化して、同一行動をとるのだから、選挙の形骸化は仕方がない。

ましてや今回は、一般の党員が投票機会を奪われた。国民は異次元空間で繰り広げられる不思議な政治ショーを呆然と見ているほかないのである。

個々の候補者の人柄、識見など度外視。派閥領袖の思惑と力関係、そして党内を覆う空気感が勝負を決める。理不尽な選挙だ。

予定通り二階幹事長と麻生副総理(財務相)は留任となった。それは、二人が菅総理誕生にいかに重要な役割を果たしたかを示している。

「政治は政策じゃない、感情だ」と、わけ知り顔の政治記者は言う。ならば、麻生副総理はなぜ、好きでもないはずの菅氏の支援にまわったのだろうか。消費税率アップの先送り、軽減税率の導入などで、菅官房長官とは何回となく意見が対立してきたのである。しかも最終的には菅長官に譲歩するという屈辱を味わった。

麻生氏の行動パターンとして、嫌な人間には極めて冷酷な仕打ちをする。それでも派閥ぐるみで菅支持を固めたのは、菅氏が勝ちそうだから、という打算しか思い当たらない。

そのために、期待をかけていたはずの岸田氏を切り捨てた。総裁選で、安倍首相とはかり、互いの側近議員の票のいくらかを岸田氏に振り向けたらしいのも、後ろめたさのゆえだろう。

安倍首相の退陣表明から2日を経た8月30日夕方、岸田氏が麻生氏の個人事務所を訪れ、支援を要請したとき、麻生氏が言い放った言葉が、いくつかのメディアで報じられた。

「古賀と縁を切ってから来い」(9月7日、BS-TBS報道1930)
「古賀とメシを食ったその足で俺のところに来るなんて、どういうことなんだ」(9月9日、FNNプライムオンライン)

いくら麻生節とはいえ、ヤクザまがいも度が過ぎる。岸田氏とは定期的に会食し、興が乗れば「大宏池会構想」なる合流話を蒸し返したりしている仲ではないか。

名指しされた古賀誠氏は、岸田氏が会長をつとめる名門派閥「宏池会」の名誉会長で、岸田氏にとっては政治の師匠といえる。

安倍前首相が退陣表明した8月28日の夜、岸田派幹部が今後の対応を話し合うため都内で開いた会合に古賀誠氏が出席していた。そこに何の不思議もないのだが、麻生氏は、自分より先に古賀氏と会ったことを問題視した。

支援を頼むのなら真っ先に俺のところへ飛んで来い、というわけだ。そうしたら麻生氏が支援したかというと、そんなわけはなく、どうみても拒否するためのイチャモンにすぎない。

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