課題山積の洋上運用案 コスト、性能未知数―陸上イージス代替・政府
秋田、山口両県への配備を断念した陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」に代わる新たな装備について、政府はレーダーと迎撃ミサイル発射装置を船などに搭載し、洋上で運用する案を軸に絞り込みを急いでいる。アショア計画で契約した米ロッキード・マーティン社の「SPY7」レーダーを使うことが前提になっており、地上用に開発中のレーダーを洋上型に変更することになる。ただ、コストが膨らむ可能性があり、性能も未知数だ。平時を含めた運用構想も固まっておらず、課題は山積している。
SPY7レーダーは、米アラスカ州に配備される米本土防衛用の弾道ミサイル警戒レーダーの派生型で、開発段階にある。政府関係者によると、地上配備型レーダーは大量の電力を消費するため、SPY7を艦船用に転用する場合には、小型化などハード面での改修が必要かどうかも検討されるが、改修内容によっては探知性能に影響が出る可能性もある。実証試験も必要で、開発期間とコストが増す恐れもある。
運用面でも課題がある。代替案はコスト削減のために、油田開発などで使用される「海上リグ」のような移動式構造物や、商船を改造してレーダーや発射装置を載せる案もあるが、機動性に欠き、天候に影響されやすい。平時の使い道も問題になる。
省人化とコスト面から対潜水艦戦や対艦ミサイルなどの装備を外し、ミサイル防衛に特化した「専用艦」を建造する案が政府内で有力視されるが、自衛隊幹部は「船体の防護能力が低いと、日常的な警戒監視は沿岸部に限られる。人手不足の中で効率が悪い」と話す。
防衛省はSPY7に固執しているが、米海軍は新型イージス艦用に米レイセオン社製「SPY6」レーダーを搭載することを決めており、2024年に配備される見通しだ。海自関係者は「洋上配備にするなら護衛艦の体制を見直し、SPY6のイージス艦を増隻する方が確実で合理的ではないか」と指摘している。(2020/09/28-13:28)