リアル版『白い巨塔』東大総長選で露呈したドロドロの権力争いとは?

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その選考過程を巡り、大揉めに揉めた東京大学の総長選。最終的には藤井輝夫副学長の4月からの就任が決定しましたが、候補者を絞り込んだ際の録音データが消去されていたことが明らかになるなど、事態は混迷を極めています。これら一連の騒動を嘆くのは、同大大学院修了者で健康社会学者の河合薫さん。河合さんは自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で、学問の根幹である透明性を失墜させた総長選関係者を批判するとともに、権力という「魔物の罠」の危険性を指摘しています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

「東大総長」という肩書きの怖さ

東京大学の総長選が、異例の“注目”を集めています。

2日に行われた五神真総長の任期満了に伴う総長選考で、来年4月からの次期総長に藤井輝夫副学長が選ばれました。

ところが、その選考過程が不透明だとして、学内で質問状や要望書が相次いで出される異例の事態となってしまったのです。

選考会議の議長を務めた小宮山宏元総長は、「いろんな意見をいただいたのは事実。問題点は第三者の意見も十分反映したうえで検証する」と約束していました。

が、6日付の朝日新聞によれば、選考過程の録音データを消去していたことが関係者の話で分かったといいます。

消去されたのは、選考会議が9月7日に、藤井氏を含む3人に総長候補を絞り込んだ際の非公開のやりとりです。別の有力候補を恣意的に外したのではないかとの批判が出ていたので、もしこれが本当なら検証作業をしたところで「正当性がない」ことになってしまいます。

んったくどうなっているのか。まるでどこぞやの政府と一緒。修了生の一人として、情けないというか残念といいますか。学内にはさまざまな派閥がありますし、同じ東大でも学部により、権力のヒエラルキーのようなものがあり、それは歴代の総長がどの学部出身者かをみれば一目瞭然です。

教授になるにも「白い巨塔」の世界は現実にあります。どんなに素晴らしい業績を残し、優秀な学生を輩出しても評価されなかったり。「学問の世界も政治力がないと上に行けないのだなぁ」なんてことを、院生時代に常々感じていました。

しかし、少なくとも私が知る先生方は、誠実な研究者であり、私はそういう先生方から「学問に王道なし」ということを学びました。

なのに今回は、その学問の根幹をなす「透明性」がうやむやにされたのです。

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