法には触れぬが極めて悪質。不動産業界にはびこる顧客大損の悪習慣

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不動産取引において、業者が顧客より自らの利益を優先させる「囲み込み」という手口をご存知でしょうか。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』ではマンション管理士の廣田信子さんが、不動産業界で横行するこの「囲い込み」を詳しく紹介するとともに、顧客サイドに自衛を呼びかけています。

「囲み込み」「両手仲介」って何のことかわかりますか?

こんにちは!廣田信子です。

コロナ禍の中での中古マンション売却は、価格の妥当性が読みにくい状況だということで、仲介業者の都合で、安い価格で売却させられる人が出そうだと、業界に詳しい方が心配しています。いわゆる、「囲い込み」「両手仲介」の問題です。不動産会社は自分の利益(仲介手数料)を最優先とし、お客さま(売主)の利益を無視した仕事をする場合が少なくないというのです。

不動産仲介における「囲い込み」とは、自社で「両手仲介」を実現したいがために、売却依頼を受けた物件の情報を市場に公開しない行為のことです。「両手仲介」とは、売買の依頼を受け、相手方を他の不動産会社を介さずに見つけることで、依頼元と相手方の両方から、仲介手数料をもらえることをいいます。

他の不動産会社が介在する片手仲介に比べて、収益は2倍となるので、不動産会社の多くは両手仲介を目指して、自社の顧客網やネット媒体などによる広告でお客さんを探すことに注力しています。

この行為自体は、法律に違反しない商行為ですから責められるものではないのかもしれません。しかし、売主と買主は、本来「高く売りたい」「安く買いたい」という利益相反の立場にあります。双方の依頼を受けたという立場になる「両手仲介」は、ともすれば、売主・買主という依頼者の利益よりも、不動産会社の利益を優先することになります。

宅建業法では、不動産の売却を依頼された場合、売主と媒介契約を結ぶことが求められ、一般的に多く用いられる専任媒介契約の形態の場合、7日以内に物件の情報をレインズ(不動産流通標準情報システム)に登録して、他の不動産会社にも公開することが義務付けられています。多くの不動産会社で物件情報を共有することにより、すみやかに依頼者の目的が達成できるとの考え方です。情報が市場に広く出回るほど、売りたい人と買いたい人のマッチングがうまくいくのは、当然のことです。

レインズ登録が義務付けられても無くならない「囲い込み」を規制し、自由で公正な不動産の流通を促進するために、幾度かの法改正がされてきています。2013年10月には、「正当な事由のない紹介拒否行為の禁止」が規定されました。レインズの情報を見て不動産会社が問い合わせをしてきても、「今、他のお客様と商談中」「今、図面作成中」などと言い訳をして、物件の詳細情報を明かさない事例が多かったためです(今でもあります)。

さらに、2016年1月には「取引状況(ステータス)」の記載が義務付けられ、「公開中」「書面による申し込みあり」など、当該物件の状況を照会先が分かるようになりました(一般消費者はそれを見ることができません)。

しかし、たとえレインズに「公開中」と登録していても、他の不動産会社からの問い合わせに対しては、「担当者が外出中」、「持ち主が旅行中で連絡が取れない」などと言い訳して、門前払いするケースが今でも後を絶たないといいます(最近は、コロナ禍が言い訳に使われることも…)。問い合わせに対しての「返答マニュアル」を用意している不動産会社もあると聞きます。

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