1兆円「日の丸ジェット」なぜ幻に?三菱重工の笑えぬ驕りと現実無視

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三菱重工は、開発を進めていた「三菱スペースジェット(MSJ)」について、事実上凍結する方向で調整していると各メディアが伝えています。メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者で、ジャーナリストの内田誠さんは、初飛行に成功してから約5年にわたる「国産ジェット」の夢の軌跡を東京新聞の記事から探ります。そして見えてきたのは、型式証明取得に苦しみ、外国人技術者頼みとなって開発費が嵩むという笑えない「国産」の実態でした。

三菱重工が初の国産ジェット旅客機開発を事実上凍結

きょうは《東京》から。【セブンNEWS】の第7項目でも取り上げましたが、三菱重工が初の国産ジェット旅客機開発を事実上凍結することになりました。

そこで、「国産ジェット」で《東京》の5年分の記事から検索を掛けることにしました。ヒットしたのは18件。意外に少ない感じがしますが、初飛行した2015年くらいから現在までの足跡をたどることができそうです。

《東京》の3面。まずは見出しと【セブンNEWS】第7項目の再掲から。

国産ジェット 事実上凍結へ
三菱重、コロナで需要激減

三菱重工業は、国産初のジェット旅客機スペースジェット(旧MRJ)の開発費や人員を大幅に削減、事業を凍結する方向で調整していることが判明。問題続発で6度にわたる納期延期の末、新型コロナウイルス流行で航空会社の需要回復が望めず、止めを刺された形。

(補足)
既に今年6月、開発体制の縮小は報道されていたが、今回、30日に発表する中期経営計画で説明されることが判明したというもの。今後、航空需要の動向をみながら、事業を再開させるかどうかを検討するとみられ、事業再開に備えて「型式証明」の取得に向けた活動は継続するという。

開発費は既に1兆円規模となり、三菱重工の2020年3月期連結決算は、事業損益が20年ぶりの赤字に陥ったほどだった。

●uttiiの眼

スペースジェット(旧MRJ)開発が度々頓挫してきたのには様々な理由があったのではないかと想像する。6度の納入延期には、技術的困難以外の障害も数多あったはずだ。

加えて、新型コロナウイルスの影響は、想定することもできなかった不運であり、このような決断は致し方ないところだろう。型式証明さえとっておけば、何時の日か再び航空需要が増えた時に、プロジェクトが復活することもあり得るという計算のようだが、その日が本当にやってくるか否かは誰にも分からない。

仮にその日がやってきも、この飛行機に国際競争力が残っているかどうか、そこは皆目見当がつかないといったところだろう。

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