トランプの「国家非常事態宣言」はプーチンへのSOSか?仮説の根拠

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異例ずくめのアメリカ大統領選は、敗者が負けを認めたのちに勝利宣言するという通例すら踏襲されぬまま、民主党のバイデン候補が一応の勝利を収めたと世間では認識されています。しかし、決して敗北を認めようとしないトランプ大統領は日本時間13日、ついに非常事態を宣言。この宣言は米国の投資家が中国軍の関連企業に投資することを禁じるものですが、時期が時期だけに、なんとも言えないきな臭さが漂っています。トランプのこの往生際の悪さは、いったい何が狙いなのでしょうか?そこで気になるのが、泥沼化した大統領選決着のカギを握っていると思われるロシアのプーチン大統領です。メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストの小川和久さんは、プーチン氏が米国に対し不気味に沈黙を守り続ける意味を解説。ウクライナ疑惑というバイデン氏の弱みをどう利用するのか、そしてトランプの劇的復活はあるのか、その動向に注目しています。

プーチンの沈黙は不気味だ

大接戦だった米国の大統領選挙ですが、マスコミは民主党のバイデン候補の勝利がほぼ確定したと伝えています。初の女性副大統領にカマラ・ハリス氏が就任することへの期待感も高まっています。

確かに、米国内での選挙に関する手続き上は、トランプ氏の逆転勝利はなくなりました。しかし、気になるのはロシアのプーチン大統領の沈黙です。ご承知の通り、バイデン候補には次男ハンター氏に関する「ウクライナ疑惑」が囁かれてきました。

2015年、オバマ政権の副大統領だったバイデン氏は検察の腐敗などが問題になっていたウクライナについて、ポロシェンコ大統領にショーキン検事総長の解任を求め、実現させます。親欧米路線のポロシェンコ政権を支援していた米国として、腐敗を一掃する必要があるというのが名目でした。

一方、ハンター氏は当時、ウクライナのガス会社の役員を務めており、この会社が検察の捜査の対象となっていたのに対して、バイデン氏は息子を守るために検事総長を解任させたのではないかというのが、ウクライナ疑惑です。トランプ氏を支持するメディアの中には、バイデン氏も株式などの形で報酬を受け取る約束になっていた疑いがあるとするものもあって、大統領選でバイデン氏を攻撃する材料に使われました。

ウクライナ東部を事実上の併合状態に置き、ウクライナ全体に情報網を張り巡らせているロシアです。ハンター氏の疑惑についても、何か掴んでいる可能性はあると見たほうがよいでしょう。動かぬ証拠を握った場合、ロシアの選択肢は二つあります。

一つは、バイデン氏を大統領就任辞退に追い込み、トランプ氏を勝利者にするというもの、いまひとつは、水面下で「ロシアを最大の脅威」とするバイデン政権に証拠を突きつけ、米国との懸案事項(新戦略兵器削減条約の延長など)で主導権を握り続けるというものです。

トランプ氏が負けを認めないでいるのは、プーチン氏が発する言葉を待って態度を決めようとしている面があることも、視野に入れておく必要があると思います。往生際の悪いトランプ氏の復権に首をかしげる向きもあるでしょうが、それでも7100万票以上を獲得するほどの支持者がいるトランプ氏は、ロシアにとって魅力的なはずです。プーチン氏が何を言うか、もう少し待つ必要があるかもしれませんね。(小川和久)

image by:Harold Escalona / Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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