日本も進行中か。中国から「見えぬ侵略」を受けた豪州の深刻度

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南シナ海や東シナ海等で強硬な海洋進出を進める中国ですが、彼らが用いるのは「武力」だけにとどまらないようです。今回の無料メルマガ『日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信』では株式会社オンザボード代表の和田憲治さんが、オーストラリアの大学教授が告発した、同国で展開されている中国による「目に見えぬ侵略」の実態を紹介しています。

『サイレント・インベージョン(目に見えぬ侵略)』論文の意義とクライブ・ハミルトン教授の功績

和田です。

オバマ時代までのアメリカは、「中国を経済成長させれば、いずれ自由と民主主義国を目指し、世界が豊かになる国際秩序に中国が大いに協力する」という前提で動いていました。

しかし、トランプ時代になると、アメリカは中国潰すべし!という対中戦略に方向転換せざるをえなくなりました。

リーマンショックを乗り越えて、「China Up,US Down!」だと傲慢になってきた中国に対して、マイケル・ピルズベリーの『チャイナ2049』やエドワード・ルトワックの『自滅する中国』や『チャイナ4.0』、ピーター・ナヴァロの『米中もし戦わば』など2010年以降、中国がアメリカの世界覇権に挑戦しているという警告本が続々と出版されました。

そしてそこに、追い打ちを書けた論文が、アメリカ以外の国々からも出版されたのです。アメリカの議会にも大いに影響を与えた論文…それが、オーストラリアのクライブ・ハミルトンの『サイレント・インベージョン(目に見えぬ侵略)』です。

このハミルトンの論文では、開かれた自由主義国家に政治、経済、産業、学校教育、移民など、あらゆる角度から中国が浸透していく戦略で、文字通り「目に見えぬ侵略」をしていることを実例の証拠をこれでもかと挙げて、中国を警戒せよと書き連ねています。

加えて、同様の論調を取る論文も次々とフォーカスされるようになりました。

オーストラリアのアレックス・ジョスキの論文や、ニュージーランドのアン=マリーブ・レイディの『マジック・ウェポン(魔法の武器)』。カナダのマイケル・マンソープの『クロウズ・オブ・パンダ(パンダの爪)』などです。

さらに、クライブ・ハミルトンとマイケレ・オールバーグ共著で、主に欧州の事例を扱った『ヒデゥン・ハンド(隠された手)』も出版されました。

近年、中国人民解放軍が着々と軍事力を増強していることはわかりやすいので、注目されていますが、それだけではなく、中国にはこうした「目に見えぬ侵略」をするための「統一戦線工作部」をはじめとした各種工作機関があり、世界各国で暗躍しています。

それらの起こした事件や手口をあらゆる角度から検証し、研究していかなくてはならない中、そのキッカケを作り、議論を切り拓いたのがクライブ・ハミルトンの『サイレント・インベージョン』だったのです。

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