戦犯は菅・二階。GoTo効果は再度の「緊急事態宣言」で吹っ飛ぶ

arata20201126
 

遅きに失した感のある、菅首相によるGoToキャンペーン見直しの表明。そもそも「コロナ収束後」の開始が予定されていながら前倒しで実施された裏には、いかなる思惑があったのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では、元全国紙社会部記者の新 恭さんがそのウラ事情を探るとともに、菅政権の現実を看破しています。

「Go To」の旗を振った菅首相はますます無口になった

誰が考えてもおかしいことだった。新型コロナの感染が収束しないなかでの、行け行けキャンペーン。税金で補助してくれるんなら行かなきゃソンと心が動くヒトの弱みにつけ込んで、一時的に経済立て直しに寄与したのは確かなようではあるが、やっぱりそう甘くはなかった。

具体的な方策を明示しないまま、菅首相は「Go To キャンペーン」を見直すと言い捨て、官邸のぶら下がりの場を去っていった。しかも、地域の事情を知っているからと、自治体に判断を押しつけ、いままでに決まったことといえば、札幌市と大阪市への旅行が「Go To Travel」の対象から一時的に外されるというだけ。東京都はどうなるのかは、国と都の責任の押しつけあいで定まらない。

札幌や大阪に行くのは、現地の医療事情がひっ迫しているからご遠慮願いたい。だけど、そこから旅行に出かけるのはOK。なんともチグハグな菅政権の対応ぶりにはあきれるばかりである。

そもそも「Go To キャンペーン」をやれば、冬場にさしかかるとともに感染者が増えていくことくらい、誰しも予想できた。それを承知のうえ、コロナ自粛で落ち込んだ経済の巻き返しを優先して強行したのだから、現下の感染急拡大は覚悟のうえだったはず。

事実、つい最近まで、菅首相は頑なに態度を変えようとはしなかった。GoTo事業の見直しについて記者団に聞かれても「専門家が現時点ではそのような状況にはないとの認識を示している」(11月13日)と、素っ気なかった。

実際には、コロナ重症者用のベッドが急ピッチで埋まり、医療現場からは悲鳴があがっていた。専門家の間に、コロナ対策と経済の両立どころか、共倒れになると危機感が募った。テレビ番組でも、一部の医師や感染症専門家から、政府の姿勢を訝る声がもれていた。

とはいえ、人の好き嫌いが激しく、それを人事に反映させるのを信条とする首相の首にスズをつける役目は気が重い。なにしろ、「Go To キャンペーン」をやめるべきだと正面切って進言し、「それなら経済はどうする。自殺者が増えたら責任をとれるのか」と凄まれでもしたら、身が縮む思いがするだろう。

ここはやはり、立場上、紳士然としたコロナ対策分科会の尾身茂会長がやんわりと、間接的に説得するほか手がなかったのである。

11月20日の夜、尾身会長は分科会としての提言を発表した。「Go To キャンペーン」にかかわる概略は以下の通りだ。

Go To Travel事業が感染拡大の主要な要因であるとのエビデンスは現在のところ存在しないが、同時期に他の提言との整合性のとれた施策を行うことで、人々の納得と協力が得られ、感染の早期の鎮静化につながり、結果的には経済的なダメージも少なくなると考えられる。…感染拡大地域においては、国としてGo To Travel事業の運用のあり方について、早急に検討していただきたい。人々の健康のための政府の英断を心からお願い申し上げる。

表現に気を配ってはいるが、中身は手厳しい。国民に“三密”回避などを求める一方で、「Go To Travel」を推進するという、政策の整合性のなさを指摘している。

言い方を変えれば、「Go To」をこのまま続けたなら、感染の急拡大に歯止めがかからず、医療は崩壊し、結果として経済も破綻する恐れがあると諭しているのだ。

分科会の提言を受け、菅首相は一夜にして方針を転換した。「それ見たことか」という人もいれば、「Go Toは成功した。ヤバくなったら撤退するのは当然だ」という人もいるだろう。

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