SNSのトレンドワードに「子供部屋おじさん」なる言葉が突如ラインクインし、各所で様々な議論が巻き起こるなど、広く注目を集めている。
きっかけとなったのは、2日に放映されたテレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」。そこで「子供部屋おじさん」の特集が組まれ、実例として70代の両親と同居するとある40代男性が紹介された。
その男性の部屋は、スーパーファミコンやビックリマンシール、そしてプラモデルなどが置かれるなど、20~30年はそのままといった、まさに子供部屋然とした雰囲気。男性はリモートでゲーム制作の仕事に携わっているとのことで、両親との関係は良好。今後結婚を機に家を出る考えはないという。
最近では「8050問題」がよく取沙汰されるように、ニートや引きこもりの高齢化が社会的な課題とされているが、今回取り上げられた男性はすべからく職に就き、標準的あるいはそれ以上の収入を得ている方も。社会との繋がりがあるうえに家族仲も良好ということで、どう見てもニートや引きこもりのように問題視されるような存在では無いように思われる。
にもかかわらず、今回あえて「子供部屋おじさん」という言葉や事象がもっともらしく取り上げられたことに、ネット上では多くの反発の声が。言葉そのものへの嫌悪感もさることながら、ワーキングプアや引きこもり予備軍を侮蔑するネットスラングという意味合いでの「子供部屋おじさん」と、単なる実家住みの独身貴族である「子供部屋おじさん」が、十把一絡げで取り上げられたことに対して違和感を覚えたという方も多いようだ
東京・四谷から、こんにちわ。#モーニングショー で #子ども部屋おじさん についてやっていたそうだけど、詳細を調べたら、事情とか全部すっ飛ばして「実家の子供部屋にて長いこと生活しているおじさん」全部をひと括りにして報道してると知り、違和感ハンパない、水曜の昼。
外、寒いなあ、おい。— JohnCustom (@johncustom) December 2, 2020
子ども部屋おじさんって表現、最上級の悪口なんだよな…………
— ふくろーん。 (@misakamifukuro) December 2, 2020
「子ども部屋おじさん」って差別的表現ですよね
しかも何故か男性限定— すれっぴー (@sreppyiii) December 2, 2020
朝からモーニングショー見てたらファミコンとかガンダム、ビックリマンシールを持ってる40代取材して、『子ども部屋おじさん』として放送されてて違和感。
レトロゲームや子供の頃の想い出含め大事な想いがこもってんだよ!
馬鹿にされた感じあって腹立つなぁ。#レトロゲーム#モーニングショー pic.twitter.com/gLs91oo8c8— けんじ/ロマサガRS/ファイナルギア (@kenjiniconico) December 1, 2020
不動産・保険業界が意図的に流布した説も
ここ数年でネット上においてかなり定着した感のある「子供部屋おじさん」というワード。「子供部屋」「おじさん」という相反する語の組み合わせのなかに、ありったけの侮蔑が込められた、ある意味で天才的ともいえるネーミングなのだが、そのルーツはSNSではなく某匿名掲示板にあるという。
「子供部屋おじさん」の初出を探してたけどやはりウメハラスレかな?
・ウメハラがめざましテレビで取り上げられる
・部屋の様子を見て「子供部屋w」や「子供部屋勢」と馬鹿にする
・その馬鹿にしてる奴らに対し、お前らも子供部屋おじさんだろみたいな事が書き込まれる pic.twitter.com/eAVQq9X6cQ— ア┣¨センスクリックお願い@けんもうくん (@ken_mo_kun) February 27, 2019
世界的に著名な格闘ゲームプレイヤーで、ネット上ではウメハラと呼ばれ親しまれている梅原大吾氏。そんな彼の人となりがフジテレビ系「めざましテレビ」にて紹介された際に、部屋の様子も映され、それに対して掲示板住民が「子供部屋wwww」とバカにし、さらにそのカキコミに対して「おまえも子供部屋おじさんだろ」といった趣旨で煽ったのが、どうやら発端の模様。ちなみに一連のカキコミは2014年2月1日とあり、6年前にはすでに存在していたようだ。
そんな某匿名掲示板の片隅で生まれたワードが、どのようにしてテレビでも取り上げられるほどの知名度を得るようになったのか。ネット上の一部で噂されているのが、不動産業界・保険業界が意図的に拡散させたという説だ。
その論拠のひとつとされているのが、2019年10月7日に公開された「90万人割れ、出生率減少を加速させる「子ども部屋おじさん」」という、日経ビジネスの記事だ。その文中には、ニッセイ基礎研究所の天野馨南子准主任研究員なる人物が識者として登場するのだが、彼女は昨今の未婚率の上昇は20~40代の独身男女の6~7割が親や親族と同居していることにも理由があるとし、その流れで「男性の方が数が多いこともあって、天野氏はこうした現象を「子ども部屋おじさん」と呼んでいる。」とある。
ちなみにニッセイ基礎研究所とは、文字通り日本生命のシンクタンクで、会社概要を見ると金融・経済から年金・介護等の社会保障問題や住宅・都市問題まで、抱えるテーマは多岐に渡る模様。このこともあって、もともと存在していた「子供部屋おじさん」というネットスラングを、働いてはいるが独身で実家住みといった“不動産・保険業界に金を落とさない層”まで対象を含める形で流布させ、如何にも困った存在だとレッテルを貼ろうとしているのでは……そう憶測する向きは結構多いようだ。
記事中の分析元がニッセイ基礎研究所。これでピンと来た。実家暮らしの若者が増えれば不動産業者や大家は商売上がったり。結婚しなければ保険にも入らないから、親会社にとっちゃWパンチで死活問題。そりゃ「子供部屋おじさん」なんてレッテル貼ってdisりたくもなろう。憂国気取った既得権益亡者め pic.twitter.com/1tTWdQAJwB
— Ettore (@bugatti26230755) October 8, 2019
イジメの構図?テレビ局の報道姿勢を問う声も
このように破壊力だけは抜群の「子供部屋おじさん」という言葉だけに、ネット上では様々な反応があり、なかには「田舎の長男なら実家暮らしは当たり前」といった声もあがる。
モーニングショーの特集内容が全て「子ども部屋おじさん」に当て嵌まるなら、地方や田舎で実家の家業やって暮らしてる長男坊も皆子ども部屋おじさん。メディアは須く叩くべきだよね?w
— ワイズメン@ONAIR (@wai_kazuyoshi) December 2, 2020
子ども部屋おじさんて言葉消えてほしい
特に田舎じゃ実家暮らし当たり前なのに、ちゃんと働いて生活費入れて親の面倒も見てる方もこのくくりに入るんでしょ?偏見もいいとこだと思う— みこ (@miko_25738_miko) December 2, 2020
しかし、やはり反応として最も多いのは「男性差別じゃないのか」という声。なかでも「女性なら家事手伝いで通るのに、なぜ男性は子供部屋おじさん呼ばわりされるのか」という素朴な疑問を持つ人は結構多い。
「子ども部屋おじさん」とか呼ばれてなんか大変ね。
これが女なら職失っても「家事手伝い」で世間的には通じるし。— 氷晶(610 369 (@mutoh_milk) December 1, 2020
また、「この手の対象が女性だったら大騒ぎだろう」という、女性差別に対しては最大限気を遣うが、男性なら叩いてもOKといった風潮を疑問視する意見も。
子ども部屋おじさんがトレンド入りしているけれど、こんなワードが許されているのは対象が男性で且つおじさんだからだよね。
この手の対象が女性だったら女性蔑視とか性差別とか、ネット上で大騒ぎになるだろうから。
まあ結婚もせず実家を出ないのは、本人としても気にはしてるだろうけど。
— まち♂ (@machi_koko0101) December 2, 2020
子供部屋おばさん これを言及すると女性差別になります。子供部屋おじさんは叩いて良いですが、おばさんをバッシングすることはしてはいけません。
— あ (@KizYt06lLaiZM73) December 2, 2020
いっぽうで、「子供部屋おじさん」という声の大きくない対象を掲げ、それをイジるという構図がもはやイジメ的であるとし、そのような取り上げ方をするテレビ局を批判する声も多くあがった。
マスコミって、人をバカにするような言葉を作って煽り立てて、いじめのようなこと率先してやってるじゃん。
子ども部屋おじさん?とか変な言葉作られて、当てはまってるかも、って思ってしまった人は相当傷つくはず。— Nico (@niconicocastle) December 2, 2020
子ども部屋おじさんがトレンドにあって何かと思えばきちんと金をいれてる実家暮らしの社会人の方を否定的に特集していたようでドン引き。揶揄するようなもんじゃないだろうに。そもそも40代だとむしろ高齢の親を心配して実家に残る人も多いだろう。いじめ対象を強引に作り出すテレビが本当に嫌いだわ。
— しろの (@zoshirono) December 2, 2020
今回、テレビ朝日が「子供部屋おじさん」を取り上げたのは、単に刺激的なワードで注目を集めたかったからか、あるいは特定の業界の意向をくみ取ってのものだったのか。どのような意図があったのかは不明だが、結果としてその報道姿勢に多くの疑念の目が向けられることになったのは間違いなさそうだ。
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