はやぶさ2のカプセルが地球帰還!プロジェクト生みの親が語る誕生秘話

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小惑星「りゅうぐう」の砂が入っていると見られるカプセルを届け、そのまま次の旅に向かった探査機「はやぶさ2」。コロナ禍にあって沈みがちな私たちに大きな勇気と感動を与えてくれたプロジェクトですが、その誕生のきっかけは意外な感情を伴ったものでした。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では「はやぶさ」初号機のプロジェクトマネージャを務めた川口淳一郎氏が、対談の中で当時を振り返っています。

「はやぶさ」プロジェクトの生みの親・川口淳一郎氏の執念

日本の小惑星探査機「はやぶさ2」の投下したカプセルが地球に帰還し、オーストラリアで回収されました。

本記事は2017年9月号に掲載された「はやぶさ」初号機のプロジェクトマネージャを務めた川口淳一郎氏、明治大学教授・斉藤孝氏、アンドロイド研究開発の第一人者・石黒浩氏の3氏の鼎談から、「はやぶさ」プロジェクト誕生のきっかけを抜粋してお届けするものです。


川口 「いや、お恥ずかしい話ですが、石黒さんに比べて僕は何かを心に決めて一貫性を持ってやってきたということはなかったですね。アポロ計画の月探査をテレビで見て小さい時から宇宙に関心を持っていたことは確かですけれども、大学卒業間際になっても特段、宇宙工学を強く志していたわけではありませんでした」

齋藤 「しかし、『はやぶさ』プロジェクトの構想を纏めて、長年チームを牽引しながら奇跡の帰還を果たされた川口先生の華々しい功績は誰もが認めることですよね」

川口 「このプロジェクトも、言ってみればある種の開き直りから始まったことだったんです(笑)。

僕がこの計画を形にして提案したのは1990年代ですが、検討を始めたのはそのずっと前からです。その頃、既にアメリカやソ連は月に行ったり、火星や金星などの惑星に行くためのプロジェクトを動かしたりしていて、日本の宇宙科学は相当遅れていたんです。NASA(アメリカ航空宇宙局)との差は歴然でした。

それで僕たちはNASAと一緒に勉強会を重ねながら『小惑星ランデヴー』を一つの目標として掲げました。要は探査機が惑星の近くにい続けることです。それだけでも我われにとっては大きな進歩だと思っていたんです。

ところがNASAはいきなり自分たちだけでプロジェクトを立ち上げて、それを実現してしまう」

齋藤 「NASAに先を越されてしまった」

川口 「これはとても辛いことでしたね。僕はアメリカのやりそうなことをやって、つまみ食いされて二番煎じに甘んじるのはどうしてもいやでした。やっぱり我われが本当に目指すべきゴールは誰もなし得たことのない「小天体のサンプルリターン」(小天体の地表のサンプルを採取し地球に持ち帰ること)だと改めて確認し合いました。

アメリカのやろうとしないものをやる。その開き直りから『はやぶさ』のミッションは生まれたんです」


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