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高齢者いじめの「医療費2割負担」で若者の負担は減らず、社会保障は崩壊へ=矢口新

75歳以上の高齢者の医療費窓口負担について、単身・年収200万円以上の人を対象に1割から2割へ引き上げる方針が決まった。現役世代の負担を軽減するとしているが、これでは社会保障制度の崩壊は止められない。(『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』矢口新)

※本記事は、矢口新氏のメルマガ『相場はあなたの夢をかなえる ー有料版ー』2020年12月14日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。信済みバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。

75歳以上の医療費2割負担、年収200万円から

菅義偉首相と公明党の山口那津男代表は、75歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる対象を年収200万円以上にすることで合意した。

75歳以上の窓口負担はいま原則1割で、年収383万円以上の人は3割。引き上げは2022年10月から実施する。22年に「団塊の世代」が75歳以上になり始めるため、現役世代の負担を軽減するというもの。

当メルマガで連載しているように、日本の社会保障制度は今のままでは崩壊する。

社会保障制度とは、国民個人個人のリスクといえる病気やケガ、障害、出産、老化、失業などの生活上の問題について、貧困を予防し、貧困者を救済し、生活を安定させるために、国家または社会が所得移転によって所得を保障し、医療や介護などの社会的サービスを給付する制度だとなっている。

その意味では、収入増の見込みが大きいとは決して言えない75歳以上の人々への医療費負担増は、社会保障制度の後退しか意味しない。

何となく、筋が通っているようで、最も困っている人たちを追い詰めるという、制度そのものの存在意義を問われるもののように思われる。

それで果たして、現役世代の負担は本当に軽減されるのだろうか?

現役世代はさらに過酷な老後を迎える

我々の年収からは、所得税の他に個人住民税、社会保険料としての年金保険料、健康保険料、介護保険料、雇用保険料などが差し引かれている。

そして、消費税も部分的には社会保障制度の維持に充てられている。

つまり、公的社会保障制度を資金面で支えているのは国民だ。その意味では、社会保障はこれまで支払ってきた社会保険料の見返りとして期待されてきたものだ。

75歳以上の人々もこれまで消費税や社会保険料を支払ってきた人々で、それが制度の維持が難しくなったという理由で、期待していた見返りがカットされることになるというのだ。

こうした約束の反故が許されるのなら、制度の維持のためには今後も社会保険料の値上げや、見返りのカットが繰り返されることになる。

決して75歳以上の人々の問題ではなく、将来に社会保障を受けることになる現役世代の問題でもあるのだ。

Next: 負担増は単なる弱者いじめ。「歪んだ税制」を先に正すべき

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