「Go To原因説」のエビデンスを黙殺した日本政府、限りなく黒に近い証拠

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12月14日、菅義偉首相は「GoToトラベル」事業の全国一斉停止を決めました。医療関係者に加え国民からも疑問の声が上がるのも構わず「エビデンスがない」と事業を継続していましたが、エビデンスの存在も認識していたのでは?という疑惑が浮上してきました。メルマガ『8人ばなし』著者の山崎勝義さんは、国立感染症研究所のレポートから、10月26日時点で国内で流行している2つの型のうちの1つは、東京を中心に変異したタイプであると指摘。GoTo事業が東京で解禁された10月1日以降の感染拡大と合わせれば、原因の1つと考えるのが当然で、菅政権が黙殺していた可能性を浮かび上がらせています。

エビデンスのこと

「Go To」が正式に停止となるや、感染拡大地域の知事たちは次々と事実上の緊急事態宣言を発出した。改めて言うが、この狭い国の中で僅か1週間という短い間に起こったことである。一体どうなっている?何がしたい?

そもそも11月の第3波の到来以来、医療関係者の各団体の代表は必死にその窮状を訴えて来た。彼らは事態が悪化してしまってからでは遅いことを一番分かっている人たちである。しかもその主張は一貫していた。曰く「いくら病院や病床を増やしても医療従事者がいなければどうしようもない」である。

つまり、人命を守る最後の砦たる医療を崩壊させないためには、医療従事者を増やすか感染者を増やさないかの二択しかなく、しかも前者は急には無理な訳だから必然後者しか採るべき道はない、ということである。

にもかかわらず、ダラダラと「Go To」を続けた結果がこれである。政権側の人間は頻りに「現下の感染拡大の原因が『Go To』であると言えるようなエビデンスはない」と口を揃えて言っていたが、エビデンスを待っていては到底防疫などできる筈もない。防疫とは予測である。故に現代疫学においては数理モデルに基づいたコンピューターシミュレーションが欠かせないのである。「Go To」は、何よりも科学を重視しなければならない局面において科学を無視した政策の象徴である。

しかも12月11日付で発表された国立感染症研究所の調査によれば、全国的に拡大している目下のウイルスは、第2波の際に東京で独自に変異したウィルスタイプに属するものであるということがゲノム解析によって判明した、ということである。お待ちかねのエビデンス第1号だ。
新型コロナウイルスSARS-CoV-2のゲノム分子疫学調査(2020年10月26日現在)

このエビデンスによると、残念ながら事実関係においては紛れもなく我々東京の人間が「Go To」に煽られて全国各地にウイルスを拡げたということになる。もちろん、ここでそれを責めるつもりはない。「Go To」はキャンペーンであった。国を挙げてのキャンペーンであった。利用すればするほどにコロナで困っている事業者を助けられるということを謳っていたからこそ皆これを利用した訳である。そこに行楽の喜びだけではなく、幾ばくかの善意の存在があったから堂々と利用できたのである。

そのため第3波が本格的なものであると見るや「Go To」の停止を待たずして旅行等をキャンセルした人も多く出た。きっとそれはキャンペーンにおける善意の存在が怪しくなったからであろう。遊興のためだけに出かけている場合ではないと感じたからであろう。

結局「エビデンス云々」は言い訳に過ぎなかったということである。何という不誠実さか!それにここまで来ると、最早経済優先ですらないとも言えるような気さえする。冷静に考えれば、(それが一時的なものであっても)感染の収束こそが最も有効な景気刺激策であることは3歳の童子でも分かることではないか。どうやら現政権には3歳の翁ばかりがいるようだ。

image by:Ned Snowman / Shutterstock.com

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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