固定金利のフラット35ですらこの10年で1%以上も下がるなど、住宅ローンの低金利化が進行し続けています。この現状を懐疑的に見るのは、マンション管理士の廣田信子さん。廣田さんは自身の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』で今回、需要と供給の関係で決まるはずの市場原理が、マンション価格についてはすでに崩壊してしまっていると指摘するとともに、金融政策によって不動産の価値が決まる不自然さを不安視しています。
10年間で住宅ローン金利は1%以上低下、低金利が高値を支える
こんにちは!廣田信子です。
住宅ローン金利は相変わらず低水準。
政権交代で、アベノミクス戦略が変化するか…と多少気にしてはいましたが、収まりそうもないコロナ禍対策として、金融緩和拡大は世界的な流れで、日本でも、金融緩和による低金利路線は、当面続きそうです。
もう長い間、住宅ローンの低金利は続いてその低い数字にマヒしてしまいそうですが、具体的な金利の変化はどうなっているか確認します(以下、具体的な数字は、日本経済新聞(1月1日)参照)。
固定金利のフラット35の金利(最頻金利)を比べると、2010年は年2.40%、2020年は年1.31%、10年で1%以上、下がっているのです。さらに民間ローンの変動型金利は、ネット系銀行の台頭による金利競争が激化し、実質、0.4%台のものまで現れています。
フラット35におけるこの金利の差がどのくらい大きいかというと、例えば、5,000万円を借り、35年返済の場合、2010年(年2.40%)では、月返済額(ボーナス返済なし)が約17万7,000円のところ、2020年(年1.31%)では、約14万9,000円と、3万円近く違うのです。そして返済総額は、約1,159万円も違います。
また、例えば、月々の返済額(ボーナス返済なし)を15万円と想定すると、借入可能額は、2010年(年2.04%)では、約4,259万円のところ、2020年(年1.31%)では、約5,051万円となり、約792万円も差があるのです。
固定金利のフラット35でこの違いですから、ネット系バンクから変動型の低金利で資金を調達したら、もっと、もっと高額の物件に手が届いてしまいます。
この超低金利が、マンション価格の高値維持を支えているといっても過言ではありません。返済額が同じなら、物件価格が800万円高くても、人は気にしないのです。ですから、ターゲット層の借入可能額から物件価格を決めることになり、マンションの価格が、需要と供給の関係で決まるという、市場原理はとうの昔に崩れているのです。
それは、今に始まったことではありませんが、金融政策によって不動産の価値が決まるこの不自然さは、この先どこまで続くのでしょうか。
10年前、私は、いくら金利が安いからと言って、借入金全額を変動金利にして目いっぱいの高額物件を購入するのは心配だと言っていたように思います。でも、この10年、金利は下がり続けているのですから、今考えると、全額を変動金利にした方が得だった訳です。もし、私の話を聞いて、フラット35にした方がいたら(いないとは思いますが…)、何だか申し訳ないな…と思ってしまいました。少なくとも、今の段階では…。
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