トランプ唯一の遺産。バイデン新大統領は「反中」を引き継げるのか

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米現地時間1月20日に任期満了を迎えるトランプ大統領。世界中に様々な混乱をもたらしたことは事実ですが、その対中政策については評価されるべきという声もあります。今回の無料メルマガ『日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信』では株式会社オンザボード代表の和田憲治さんが、トランプ政権の要人たちが示してきた中国に対する危惧や懸念を改めて紹介しています。

盗みと嘘が平気な文化

和田です。

マイク・ペンス米国副大統領は、2018年に保守系シンクタンクのハドソン研究所で、事実上宣戦布告ともとれる演説を行いました。

改めて、注目すべきポイントは以下です。

  1. 中国がアメリカから強制技術移転や知財窃盗を繰り返してきたこと
  2. 中国の国有企業への補助金などの不当な政策で無尽蔵に国策で関与する中国企業に対抗するなら、米国企業が公平なビジネス競争ができないと指摘
  3. 中国は政府一体で政治・経済・軍事力やプロパガンダを用いて米国に影響を及ぼし、米国の政策・政治に影響力を行使している

米国の歴代政権は中国の行動を見過ごし、ほぼ加担している…と言っても過言ではない状況でした。

しかし、ペンス副大統領は「そのような(中国を野放しにする)時代は終わった」と述べ、それらに対して毅然と対応していくと主張しました。経済・軍事・外交などの各分野で中国を全面的に批判したのです。

中国には、国外にいる中国人を動かせる「国防動員法」という法律がありますが、これにより、どんなに倫理性の高い中国人であっても、本国である中国からのコントロールによって急に情報や技術の窃盗などのスパイ行為を始める可能性があるわけです。

日本など、各自の居住国の法律より、中国本土の法律のほうを優先させるということですから、これは非常に危険です。

なので、2018年の「ペンス演説」の結論は「中国はアメリカから知的財産を盗みまくったしそれを止めろ言っても止めない。ならば、その元凶である中国共産党を潰さないといけない」となったわけです。

その後、ペンス副大統領は、2019年にもワシントンの政府系シンクタンクで演説を行い自国企業が中国側の報復を恐れ忖度することで自由競争が損なわれていることなどを加えました。

加えて、マイク・ポンペオ国務長官が2020年に、カリフォルニア州のニクソン大統領記念図書館にて「共産主義の中国と自由世界の未来」と題した演説を行いました。

「私たちが共産主義の中国を変えなければ、彼らが私たちを変える」
「習近平氏は全体主義イデオロギーの信奉者」
「もはや米中両国の根本的な政治的、イデオロギー上の違いを無視できない」

そして、「もはや(中国を)普通の国として扱うことはできない」とまで言い切りました。中国の国家主席を名指しで批判したのですこれでは、米中両国が友好国家に戻るようなことはもはやことはないだろう…と言わざるを得ません。

1970年代の米中国交正常化を主導したリチャード・ニクソン元大統領が晩年抱いた「我々は中国というフランケンシュタインを造ってしまったのかもしれない」という危惧が現実のものとなりました。

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