コロナ禍だから役立つ。「孫子の兵法」を経営の参考に活かす方法

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コロナ禍にあって、多くの経営者が苦戦を強いられています。現在の状況はしばしば戦時下に例えられますが、そんな今だからこそ「兵法書」が役立つのではないでしょうか。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者で経営コンサルタントの梅本泰則さんが、経営に役立つ「孫氏」の言葉の数々を取り上げ、丁寧に解説しています。

孫子に学ぶ経営

古来より日本では中国の古典がよく読まれています。特に政治にたずさわる人たちの参考書になってきました。現代では、愛読書としている経営者も多いです。そこで、今回はその古典の中から孫子の言葉を取り上げてみることにしました。

五つの重要項目

「孫子」は、多くの歴史上の人物が参考にしてきた書物です。現代でも、「孫子」を参考にしている経営者が数多くいます。そこで、このコロナ禍で社会や企業が揺らいでいる今、孫子の言葉を経営の参考にしてみてはいかがでしょう。いくつかの言葉を拾ってみます。

まず最初にあげる言葉は、

一に曰(いわ)く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法
(始計篇 第一)

戦いに勝つには、五つの重要項目がある。それが道(理念)、天(自然環境)、地(立地条件)、将(リーダー)、法(システム)である、という意味です。

この言葉は、経営の重要な要素を表していると言っていいでしょう。

特に一番重要なのが「道」とあります。孫子によれば、「道」とは「民をして意を上と同じくさせるもの」です。つまり、会社のすすむべき方向を社員と一致させることが「道」だと言っています。つまり、これは「理念」のことです。「道」を一番に持ってくる孫子は凄いと思いませんか。だから、経営者には腹に落ちる書物なのです。

「道」の次には、「天」や「地」といった環境条件があげられています。経営においても外部環境を有利に活用することは、重要なことです。その次は「将」。経営者やリーダーですね。この能力しだいで、戦いに勝つことも負けることもあります。そして、この五つの中には「兵」つまり「社員」は出てきません。あくまでも、会社は経営者次第だと言っています。厳しいですね。

最後にあがっているのが「法」。これは「法律」のことではありません。組織やルールやシステムなど、管理のことを言っています。つまり、経営管理のことですね。さらに、この言葉の前には「計るに五事をもってし、これを校(くら)ぶるに計をもってし、その情をもとむ」とあります。つまり、経営計画を立てるときには、この五つのことを重視し、しっかりと情報分析せよ、ということです。まずは、この五つが大事なことを押さえておきましょう。

孫子とSWOT分析

次に紹介する言葉は、

彼を知りて己を知れば勝、すなわち殆(あや)うからず。
天を知りて地を知れば勝、すなわち全(まっと)うすべし。
(地形篇 第一)

孫子の中で最も有名な言葉に、

彼を知りて己を知れば、百戦するも殆うからす
(謀攻篇第三)

があります。しかし、地形篇の言葉では「彼」と「己」のことだけでなく、「天」と「地」を知ることが重要だと言っているのです。「天」と「地」は、最初にあげた「五事」のことです。

実はこの言葉が意味することは、現代の経営で言えば、「SWOT分析」に当たります。つまり、自社を取り巻く世の中の変化や競合相手、顧客の分析をし、そこにおけるチャンスやリスクを明らかにすると同時に自社の強みや弱みを明らかにするのがSWOT分析です。まさに孫子はSWOT分析の重要性を説いています。2,500年前にこのようなことが言われていたとは驚きです。

孫子では、こうした根本的な言葉と共に、具体的な内容も数多く出てきます。元来は戦略の書物ですから、戦略に関する言葉も拾ってみましょう。

凡(およ)そ戦いは正を以って合い、奇を以って勝つ
(兵勢篇第五)

まずは正攻法で相手に当たり、その後で意表をつく戦法を組み合わせて戦えば勝てる、ということです。最初は定石どおりに戦え、ということでしょう。もちろん、定石を知っていることが必要です。

「奇」というのは、相手の弱点をついたり、相手の関心のない分野に進出したり、今まで行われていない方法で攻めるといったことです。これもSWOT分析で世の中の流れを見ることで、「奇」が見えてきます。

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