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コロナ生還者の実体験。接触確認アプリCOCOA、もう1つの致命的な“不具合”とは?

新型コロナ感染者との濃厚接触の可能性を知らせるスマホ向けアプリとして、厚生労働省などがインストールを推し進めてきた「COCOA」。その接触通知が一部の端末に約4か月に渡って届いていなかったことが、ここに来て明らかになった。

報道によると、今回の障害はAndroid版のアプリで発生したもので、ダウンロード数の約30%、約770万件のアプリで起きていたとのこと。最近になり利用者から「陽性者と接触したはずなのに通知が来ない」という指摘が相次いだため、保守業者が確認したところ判明したという。

今回の問題に関して菅義偉首相は4日、衆院予算委員会での答弁で「お粗末なことだ」「もう二度とこういうことがないように緊張感を持って対応したい」と謝罪。今後プログラムを修正し、2月中旬には解消する見込みだという。

iOS版アプリもヤバイ。感染者が語るCOCOAの“無理ゲー”ぶり

登場当初から、その仕組みや効果に関して疑問の声があがっていたCOCOA。それだけに「やっぱり…」といった反応も、ネット上では多く見られるが、今回の問題以外にも根本的かつ致命的な不具合が存在し、それが放置されたままにされているという。というのも、実際にコロナ感染した際にユーザーが行うアプリへの入力が、事実上“無理ゲー”となっているというのだ。これはAndroid版だけの問題ではなく、iOS版にも共通する不具合となっている。

COCOAに対して「とにかくクソ仕様だった」と憤りの声をあげるのは、都内在住のAさん(30代)。今年1月上旬に新型コロナへの感染が発覚し、一週間ほどの入院生活を余儀なくされたものの、現在はすでに回復しているという人物だ。コロナの症状が出てつらい時期にどんな目にあったのか、実際に話を聞いた。

昨年末から38度台の発熱があったというAさんは、今年に入ってさらに咳も出だしたことから、1月上旬のある日に東京都の発熱相談センターに電話連絡。その日のうちに保健所から電話があり、指定の病院でPCR検査を実施したところ、結果は陽性反応。さらにCT検査も実施したところ、コロナ特有の肺炎の症状が認められたため、翌日から入院することになったそうだ。

Aさん曰く、コロナ感染時で一番辛かったのは、入院直後の熱や咳が特に酷かった時とのこと。咳き込んだだけでも激痛で気を失うほどだったといい、もしも入院ではなく自宅療養だったら、気を失ったままそのまま……という可能性もあったかもしれないと、病床で思わずゾッとしたという。

病身での対応はほぼ無理な“クソ仕様”

さて問題のCOCOAだが、Aさんの時はPCR検査とCT検査によってコロナ感染が確定的となった日の夜21時頃に、かねてから登録していた自身のiOS版COCOAアプリに通知が飛んできたとのこと。ちなみに、その前の段階の保健所との電話のやり取りの中で、先方から「COCOAアプリに登録しますか」と聞かれ、はいと答えたところ、「登録番号送るから待っててください」と言われたそうだ。

ところが登録番号(通知内では「処理番号」と呼称)は届いたものの、COCOAアプリへの入力有効時間はわずか1時間で、もし登録できなかった際は保健所へ再び電話を、と書かれていたという。

送られてきた通知全文

送られてきた通知全文

先述の通り、ひどい熱と咳の症状があり、入院を待つばかりの状態だったAさんはすっかり寝込んでしまっており、1時間以内の対応は無理だったという。

ご自身もIT系の職に就いており、過去にはシステム開発の経験もあるというAさん。それだけに、COCOAアプリへの評価は相当に手厳しい。

「まずは、夜21時にいきなり通知してくる点。さらに陽性者登録の有効期限が、登録番号発行から1時間以内というのが、本当にクソ仕様ですね。おまけに期限が切れると、保健所に再発行を依頼する必要があるのもクソ。そもそも、なぜ電話で再依頼なのかっていう点もおかしいし、これじゃぁ保健所の職員さんの仕事が増えるばかりで、かわいそうですよね」

さらに、通知で飛んできた登録番号がわずか8桁だった件に関しても、こう苦言を呈している。

「8桁だと、番号を総当たりされた場合にブロックできないと思いますよ。ていうか、そのために“有効期限が1時間”という無理ゲーになっちゃってるんじゃないかって。とにかくツッコミどころが多すぎて、あまりにもおかしいアプリですよ、COCOAは……」

確かに瀕死の状況で寝込んでいる夜間に、いきなり送られてくる通知に1時間以内で対応せよというのは、かなり酷な話である。さらにこの“1時間”という短すぎるタイムリミットが、アプリ開発側の勝手な都合によって設定されているとなれば、これは怒り心頭となるのも当然だろう。

さらに番号入力の有効時間に間に合わず、再び保健所に連絡するとしても、その電話が繋がらないといった事態も大いに想定される。現にAさんは、最初に連絡した発熱相談センターへの電話がなかなか繋がらず、しかもその電話は順番に繋げてくれるシステムではなく、その都度通話が切れるようになっていたとのこと。Aさんはその都度掛け直していたそうだが、これも病身にはかなり堪えたと語る。

「私は幸いに助かりましたが、下手をしたら同じような状況で通知を受け取り、対応ができずにそのまま在宅で亡くなったという人も、なかにはいるのではないでしょうか」と、自身の体験を振り返ってくれたAさん。コロナへの感染で、身も心も疲弊した状態のユーザーが扱うことも想定されているアプリにも関わらず、その仕様はそういった人々に寄り添うものではまったくなかったということだろう。

以下は、Aさんから提供されたアプリのスクリーンショット画像である。

アプリ上で処理番号を入れるとこのように確認される。この「ランダムなID」は処理番号のことを指しているようだが、高齢者の方などすぐに理解するのは難しいだろう

アプリ上で処理番号を入れるとこのように確認される。この「ランダムなID」は処理番号のことを指しているようだが、高齢者の方などすぐに理解するのは難しいだろう

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もう一度番号を入れて頑張るが…

もう一度番号を入れて頑張るが…

「登録待ち2/3」の表示がまたも意味不明。高熱が出た状態で、咳き込みながら登録を完了させるのはハードルが高すぎる

「登録待ち2/3」の表示がまたも意味不明。高熱が出た状態で、咳き込みながら登録を完了させるのはハードルが高すぎる

「多重下請け」もアプリのクソ仕様に影響か

このように新型コロナの感染拡大を受けて急ピッチで作られたものだとはいえ、そのお粗末ぶりが過ぎるCOCOAだが、そのアプリの開発を厚労省から請け負った企業「パーソルプロセス&テクノロジー」に対しても、多くのネットユーザーから様々な意見が寄せられている。

そもそもCOCOAの基盤となるプログラムは、過去の報道によると有志で集まったエンジニア集団「COVID-19 Radar Japan」によって無償で作られたもの。その後、厚労省が接触確認アプリの開発とメンテナンスをパーソルプロセス&テクノロジーに発注した際に、COCOAをベースに開発することとなったという。ちなみに、このパーソルプロセス&テクノロジーだが、以前就活生に対して面接で「ごめん、そのままだと落とすけどどうする?」などの発言をし、その何様ぶりが「気持ち悪い」と炎上する騒ぎとなった「パーソルホールディングス」の系列会社であり、今回の件でそのことを思い返した人も多いようだ。

このパーソルプロセス&テクノロジーだが、厚労省から受注したアプリ開発とメンテナンスを、日本マイクロソフトとフィクサーという会社に再委託したとのこと。こういった流れからも、製品に対して最終的な責任は、厚労省はもとより直接委託を受けたパーソルプロセス&テクノロジーにもあるという意見が大勢を占めている。くわえて今回のケースでも発覚した「多重下請け」を改めて問題視する向きも多く、「どれだけ中抜きしたんだろう?」と訝しむ声もあがる。

さらに多くの人々を恐れさせているのが、今後実施が予定されているコロナワクチン接種の管理システムに関しても、このパーソルプロセス&テクノロジーが関わっているという事実だ。ネット上では「本当に大丈夫なんだろうか?」「ワクチン管理でのミスは致命傷になる」など、不安の声が多く寄せられる事態となっている。

菅首相の「謝罪」によって、一応の幕引きとなった見方もあったCOCOAを巡る問題。ただ、今回ご紹介した実際に利用した感染者の方が訴える、そもそもの仕様のマズさという根本的な問題はおざなりにされたままと言っても過言ではない。さらにこの分だと、今後行われる一連のワクチン接種の際にも、何らかしらの不具合発生の可能性も否定できず、何とも由々しき状況であることは間違いないだろう。

Next: AppleやGoogleは下請けに頼まない?

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