ネット遮断中のミャンマーから裏ルートで聞いたクーデターの真相

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突如として起きたミャンマーの軍事クーデターですが、連日のように報じられている「不正選挙」だけが本当の理由なのでしょうか? 以前よりミャンマーとの関わりが深い有名投資家の房広治さんは、自身のメルマガ『房広治の「Nothing to lose! 失う物は何も無い。」』の中で、ネット遮断中のミャンマーに「裏のルート」を使って連絡を取り、現地人から情報を収集。そこで分かった、今回の軍事クーデター発生の背景などを明かしています。

※本記事は有料メルマガ『房広治の「Nothing to lose! 失う物は何も無い。」』2021年2月5日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。

プロフィール:房広治(ふさ こうじ)
アメリカ、イギリス、香港など主要金融センターで著名な日本人投資家。留学中に外資系銀行に就職し、わずか10年で日本のインベストメントバンキングのトップとなった。投資家転向初年度に年率リターン90%以上の運用成績を出し、ファンドマネジャー・オブ・ザ・イヤーとなる。現在は、バークレー大学・ハースビジネススクール、コロンビア大学、ロンドンビジネススクール、香港大学など著名大学で、オルタナテイブ投資、ヘッジファンド、プライベートエクイテイファンド、コーポレートガバナンス、金融危機についてのゲスト講義なども行っている。

現地人と連絡して聞いたミャンマーのクーデター

今回のミャンマーのクーデターを一番早く報道したのはBBCで、1月31日(日)のイギリス時間の夜にはニュースが流れた。

直ぐに、ミャンマーの友人数人にSNSを使い連絡を試みたが、通じない。軍が通信網を限られた人々だけに使わせているのだ。用意周到な本格的なクーデターだと理解したので、ミャンマーではアウンサンスーチー氏と親しいと思われている私から、直接メールをする相手を危険な状態にすることになりかねない。

そこで、親しい人々に、私の代わりに、彼ら彼女たちの知り合いに連絡をとってもらったところ、あるルートを使えば連絡ができることが分かり、4日になって初めて、現地の友人たちとメールやLINEで話をした。

Facebookがとても幅を利かせているミャンマーは、Facebookが行っているサービスがどれも使えないし、使わない方がよい。しかしながら今回は、ジェネレーションZ世代の方が軍よりもインターネットに詳しいため、情報が遮断されたのは最初の3日だけ。今では、少しネットワークが悪いレベルくらいまで回復したようである。

2月5日には「Centre for Humanitarian Dialogue(人道対話センター)」と話をし、全体像が分かった。

ミンアウンフライン将軍は今年7月に65歳になり、引退しなければならなかった。引退後のポジションについて、アウンサンスーチー氏といろいろな交渉を行っていた。

この時に、テインセイン大統領時代の経済発展の方が、NLD(国民民主連盟、アウンサンスーチー氏が党首をつとめる政党)が主導で行っている経済政策よりも伸びたことを理由に、大臣か何かのポジションを要求したのかもしれない。しかし、アウンサンスーチー氏が譲歩する理由はなかった。

そして、約5千6百万人の国民に対して、選挙権があるのは3千7百万人。このうち「選挙区によっては、2度投票をした人がいたりして、7百万人から1千万人の票に疑いがある」と将軍がアウンサンスーチー氏に開票の再集計を求めていたのだという。

それに対して、アウンサンスーチー氏は、どこの国にでもある、少数の集計違いであり、再集計したところで、どの区域でも結果がひっくり返るわけではないと、突っぱねたのだそうだ。

将軍側は、国会の召集を一週間先延ばしして交渉を続けたいと言ったのに対して、アウンサンスーチー氏は、「一週間の延期が二週間になり、それがまた延期されることになりかねない」と拒否をしたらしい。

そこで、将軍側は、「Walky Talky」と呼ばれている、ミャンマーのそれなりの大きさの家に住んでいる人であれば誰でも持っている通信機が自宅にあったという罪状で、アウンサンスーチー氏を逮捕したということなのである。

今回、国連のSecurity Council(安全保障理事会)は、中国を含めてミャンマー軍のクーデターに対して非難しているので、今後、国連加盟国による経済制裁が科されることはほぼ間違いない。

憲法によると、緊急時に軍が1年間統治の後、「6カ月間を2度延長することができる」となっているが、今後どうなるかは、情報が収集出来た段階で報告したいと思う。

【関連】ミャンマーはなぜ、親日国なのか?知られざるアウン・サン将軍の素顔

image by: teera.noisakran / Shutterstock.com

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【著者】 房広治 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 不定期 発行予定

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