ダイヤモンド・プリンセス号の乗客をはじめ、多くの新型コロナウイルス感染者を受け入れた自衛隊中央病院ですが、スタッフへの二次感染は今に至るまでただの一度も発生していません。そのカギはどこにあるのでしょうか。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、前院長・上部泰秀氏が語った現場での対応や、隊員たちがいかにして厳しい状況に対峙したかが紹介されています。
自衛隊中央病院は、なぜ院内感染を阻止できたのか
昨年、新型コロナウイルスの集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」。同船の乗客をはじめ、多数の感染者を受け入れながらも、自衛隊中央病院はなぜ院内感染を見事に阻止できたのでしょうか。多数の患者と向き合ってきた前院長・上部泰秀氏のお話の一部を紹介します。
ダイヤモンド・プリンセスへの対応に当たった時は、相手は未知の感染症であり、しかも短期間に多数の患者さんを受け入れる必要もあり、緊張感は極度に達しました。
私たちはそうした中でも、患者さんに良質で安全な医療や、思い遣りのある看護を提供する態勢維持に尽力しました。これまでの訓練の成果を活用し、様々な情報を勤務員間で共有するなどの取り組みにより、院内感染防止や医療事故防止を図りながら多数の患者さんを受け入れることができました。
おかげでその後の市中感染期に勤務員は、「防護処置を適切に行えば院内感染を防止できる」「訓練したことはできる」と、自信を持って対応することができたのです。
本院は、院内感染が生起した場合、診療継続が不可能になるとの認識のもと、まず院内感染を出さないことを何より最優先としました。病院全職員に対して手洗いやマスク着用等の徹底を図るとともに、感染者とスタッフ等の動線の区分を明確にしました。
目から飛沫・接触感染するリスクも想定されたので、対応する職員はフェイスマスク、N95マスク、ガウン等を着用して対応しました。特に個人防護衣は脱ぐ時が重要であり、姿見を随所において一人でもチェックできるようにし、手指消毒も徹底しました。
さらに、感染症病棟以外でもドアノブやエレベーターのボタン、業務で使うタブレット端末など、職員や患者さんが手に触れるものの感染対策にも十分な注意を払いました。
また、院内感染制御チーム(ICT)による個人用防護衣の着脱訓練及びN95マスクのフィットテストを実施しました。さらに、ICTによる各種会議及び院内掲示物による注意喚起等で院内感染防止の徹底を図りました。
集団で行動するという自衛隊の特性も、院内感染を防ぐことができた一因かもしれません。「自分自身が感染して、他の職員に感染を広げるのは避けたい」という意識、使命感、責任感を一人ひとりが堅持して、厳しい状況に対峙してきたのです。
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