菅首相、混乱収拾に動かず 政権運営に打撃―森会長辞意

2021.02.12
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by 時事通信


首相官邸に入る菅義偉首相=9日、東京・永田町

首相官邸に入る菅義偉首相=9日、東京・永田町

 女性蔑視発言で国内外から集中砲火を浴びた東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が辞意を固めた。この間、首相が混乱収拾に動いた形跡はない。野党は「指導力不足」と首相に矛先を向けており、今後の政権運営に打撃となりそうだ。
 「辞めるつもりだ」。森氏は11日、翌日の組織委会合で会長辞任を正式に表明すると、複数の関係者に伝えた。辞任の理由については、東京都の小池百合子知事が森氏参加のトップ級4者会談への欠席を表明したことに加え、大会スポンサーからも批判が相次いだことを挙げたという。
 大会ボランティアや聖火ランナーに辞退の動きが広がり、大会開催を危ぶむ声が日増しに強まる中、首相は積極的な関与を避け続けた。森氏の発言に対し、「あってはならない」と批判こそ口にしたものの、進退については「首相に権限はない」との立場を取り続けた。
 森氏は国際社会にも顔が利く首相経験者。国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長らと信頼関係を築いており、新型コロナウイルス感染拡大で延期された大会の実現に向け、「余人をもって代えがたい」(自民党幹部)との思いがあったのは間違いない。
 同時に、森氏は党最大派閥の細田派に隠然たる影響力を持つ最長老でもある。党内基盤が弱い無派閥の首相としては、森氏に弓を引けば同派の反発を招き、自身の足元が揺らぎかねないとの計算もあったようだ。政府関係者は「首相は派閥に遠慮していたようだ」と明かす。
 森氏の決断を受け、首相周辺からは「これで問題を幕引きにできる」との楽観論も漏れる。しかし、党関係者は「打撃はさらに広がる可能性がある」と懸念を隠さない。
 野党は、首相の「不作為」に照準を絞る。立憲民主党の代表は11日、地方議員とのオンライン会合で「遅きに失した」と批判。共産党の書記局長は取材に「首相は深刻な反省と国民への謝罪が必要だ」と断じた。15日の衆院予算委員会の集中審議などで厳しく追及する構えだ。
 より深刻なのは、東京五輪・パラリンピックへの影響だ。「まとめ役」の退場がきっかけで中止に追い込まれれば、政権が動揺するのは必至。閣僚経験者は「首相は傷の浅いうちに森氏を辞めさせるべきだった。そうすれば、森氏を何らかの形で組織委に残す道もあった」と冷ややかに語った。(2021/02/12-08:58)

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