財政金融政策によって株価が世界的に上昇、日本でも30年ぶりに日経平均が3万円を回復しました。資産を持つ人がますます豊かになり、持たざる者は取り残される「コロナ格差」が生まれています。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)
※本記事は有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2021年2月17日の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
11年ぶりのマイナス成長発表の日に
2月15日、日経平均株価は1990年以来の3万円を回復しました。
ドル建てではすでに89年末のバブルピーク水準をも上回る過去最高水準を更新していました。この記念すべき3万円回復は、内閣府が発表した昨年10-12月期のGDP(国内総生産)が前期比3.0%(年率12.7%)成長となったことが契機となった面があります。
しかも輸出が11.1%増、設備投資が4.5%増、個人消費が2.2%増と、「3横綱」がいずれも好調でした。
しかし、同時に発表された2020年通期のGDPはマイナス4.8%成長と、2009年にリーマンショックで5.7%のマイナス成長となった時以来のマイナス成長です。
これは米国の3.5%マイナス成長を上回る減少です。市場にとっては過去の数字なのかもしれませんが、昨年がコロナで大幅なマイナス成長と発表された日に株価が3万円を回復する皮肉な結果となりました。
リーマンは企業に、コロナは個人に打撃
もっとも、同じマイナス成長でも、リーマン危機時と今回とでは大きな違いがあります。
リーマン危機の時は世界的な金融不安で、企業の生産、投資が大きく減少し、貿易も急縮小しました。2009年の日本のGDPを見ても、全体で5.7%減となった主犯は輸出の23.4%減、設備投資の13.0%減で、この時の個人消費は0.9%減にとどまりました。
これに対してコロナ禍の2020年は、個人消費が5.9%減となったのが最大の足かせで、次いで輸出の12.3%減、設備投資の5.8%減となっています。
輸出の減少には訪日外国人によるインバウンド消費の減少も含まれ、輸出自体はここまで落ちていません。
つまり、打撃を受けたのが今回は個人消費中心で、企業は比較的堅調でした。特に、半導体関連や巣籠需要を得る業界の株価が大きく上昇しています。