新型コロナウイルスの緊急事態宣言に伴い、時短要請に応じた飲食店では1日一律6万円の協力金が支給されています。しかし、店の規模や立地の違いを考慮されていないため、不公平感を訴える声が止みません。この現状を今からでもすぐに改めるべきだと主張するのは、小沢一郎氏の秘書を長く務めた元衆議院議員の石川知裕さん。石川さんはメルマガ『石川ともひろの永田町早読み!』の中で、米国の制度を参考にしつつ、次に来るべき事態に備えるべきだと説いています。
「コロナ給付金バブル」は納得がいかない/事業規模に応じた支援をすべき
銀座は緊急事態宣言で、ススキノは時短要請の真っ最中なので、夜の盛り場に人がいない。 ガラガラだ。 15時に開店して19時にお酒のラストオーダーと言われるのであれば昼過ぎから飲める人でないと通えない。
それでも夜の蝶を求めて跋扈(ばっこ)している政治家はいる。 議員バッジを取られるバカもいる。
緊急事態宣言や営業時間の短縮要請が出ていない地域でも、夜の街は閑古鳥が鳴いている。 時短要請がないので、行政からの支援金は当然もらえない。
地元で飲んでいると、居酒屋やバーの経営者から「政治家は何もしてくれない!」「帯広市は何もしてくれない」と怒りの声を寄せられることもしばしばだ。 金曜日に久しぶりになじみのバーにうかがうと、「石川さん、東京はバブルですよ。 これおかしくないですか?」と帯広市内のバーで店主に言われた。
マスターによると、東京で同じようなバーを経営している友人が「給付金バブル」になっているのだという。 もともと毎日数人しか来ないようなお店へ1日6万もの給付金を出して、1ヶ月で180万円も売り上げを計上できたら、「緊急事態宣言が続いた方が儲かる」という本末転倒な事態を皮肉ったのだ。 仕入れがほとんどないのだから利益率も高いから緊急事態宣言さまさまだ。
コロナ発生から1年が経過した。 時短要請で苦しむところが多い中、「給付金バブル」になっているお店があるのは、政策として失敗である。 支援金はスピードが大事だが、今回の緊急事態宣言は2回目であり、検討すべき時間は十分にあったはずである。
3回目の緊急事態宣言がないとは限らない。 変異種がどのくらいの威力があるか分からない中、次に備えて事業規模に応じた支援を準備すべきではないか。 米国では、まずは銀行が企業に融資して、その後に国から従業員の給与分などの支援金が銀行に支払われる「Paycheck Protection Program (PPP)」という制度がある。 これを参考に国民民主党などでも法制化を検討している。
以下、在米国日本大使館のPPP制度についての説明文の一部を掲載する。
6月5日に成立した新法(Paycheck Protection Flexibility Act)により,貸付対象となる期間の延長,返済免除となる要件の緩和等が実施された。 具体的には,従来は2月15日から6月30日の間に発生した従業員の給与,賃料,保険,公共料金等の支払のために一事業者あたり最大1,000万ドルの融資資金を提供するものとされていたが,12月31日まで延長された。 債務免除に関しては,従来,対象期間は融資実行後8週間だったが,24週間(または12月31日のどちらか早く到来する方)に延長された。 さらに,従業員の雇用を維持した場合に,借り入れた融資資金のうち給与,賃料等に充てられた金額について債務が免除される規定について,融資資金の75%以上を給与に充てること,債務免除額の75%以上を給与に充てることを求める条件に関し,この割合がいずれも60%に引き下げられた(仮に,債務免除対象期間内に給与に充てられた金額が融資金額の60%未満だった場合,少なくとも債務免除額の60%が給与に充てられていれば,債務者は引き続き部分的な債務免除を受けることが可能)。
この制度は、雇用を守ることを最優先して作られた。 だから、従業員の雇用を継続すれば、給与分や賃料を免除するとある。 日本の支援制度は個々の事業体ごとに焦点を当てているが、本来は雇用者(従業員を雇っている人)に焦点を当てるべきだ。 都内でも同業種でピンからキリまで差があるのに、これまで一律に対応してきたことに無理がある。 今からでも制度設計を改めるべきだろう。
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