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中国人はもうネットを読まない。進化する「ムービー検索」で世界激変、報道もECも主役は15秒動画に=牧野武文

中国ではニュースを知りたい時も、テキストの記事を読むより「ショートムービー」を見ることを好む人が増えています。インターネットの中心的コンテンツが、テキストと写真の時代が終わり、ショートムービーになるのではないかと思えるほど広がり始めています。TikTokを開発したバイトダンスが、ショートムービー用の検索エンジンの開発を宣言するなど、中国のテック業界は、テキストベースのインターネットからショートムービーベースのインターネットへと大改造する動きが始まっています。この動きは日本にも上陸しつつあります。(『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』牧野武文)

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※本記事は有料メルマガ『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』2021年4月5日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:牧野武文(まきの たけふみ)
ITジャーナリスト、フリーライター。著書に『Googleの正体』『論語なう』『任天堂ノスタルジー横井軍平とその時代』など。中国のIT事情を解説するブログ「中華IT最新事情」の発行人を務める。

時代はテキストからショートムービーに

今回は、中国で起こりつつあるインターネットの大きな変化についてご紹介します。

15秒のショートムービー共有プラットフォーム「TikTok」のことはどなたもご存知かと思います。このTikTokは、開発したのが北京のバイトダンスであり、中国では抖音(ドウイン)という名称であることもご存知だと思います。

このショートムービーという発想は、一種の発明でした。ライバルに「快手」(クワイショウ)が登場したばかりでなく、テンセントのWeChatも視頻号(チャネルズ)というTikTokそっくりの機能を追加しました。YouTubeまでYouTubeショートというサービスを始めています。

抖音は若い女性のダンス映像でヒットをしたとよく言われ、それはその通りなのですが、今ではニュース映像や科学知識の解説映像、商品紹介映像、寸劇コント、日常の報告映像などあらゆる映像が投稿されるようになっています。ジャンルの幅はYouTubeと変わらなくなっていて、そのほとんどが15秒から1分程度のショートムービーなのです。

ニュースを知りたい時も、テキストの記事を読むより、ショートムービーを見ることを好む人が増えています。商品紹介もテキストと写真の説明より、ショートムービーの方がわかりやすい。
そういうことから、インターネットの中心的コンテンツが、テキストと写真の時代が終わり、ショートムービーになるのではないかと思えるほど広がり始めています。

それは単なる一時期の流行ではないようです。バイトダンスが、ショートムービー用の検索エンジンの開発を宣言するなど、中国のテック業界は、テキストベースのインターネットからショートムービーベースのインターネットへと大改造する動きが始まっています。

今回は、今、中国で起こりつつある、インターネットの大変化についてご紹介します。

インターネットに3度目の大変革?

インターネットは、そのあり方が大きく変わるかもしれません。

インターネットの重要な変化は、過去2回ありました。1回目は、1989年の商用利用の開始です。これでECを前提にしたウェブブラウザー「Mosaic」が登場して、ウェブ時代が始まります。

次の変化が2007年のiPhoneの登場です。これでインターネットのメインストリームは、ウェブからモバイルウェブやアプリに移りました。

そして、今、ウェブからコンテンツ、より正確に言うと、テキストからショートムービーに移り始める可能性が出てきました。

そのきっかけになったのが、2021年2月17日に、バイトダンスの張楠(ジャン・ナン)CEOの、ニュースキュレーションアプリ「今日頭条」での発言です。この発言に、中国のエンジニアたちは注目をしています。それは、バイトダンスがショートムービー用の検索エンジンの開発を始めるというものです。

張楠CEOは、こう語りました。

「この数年、社会の表現、創作の多くがムービーになりました。情報に直接アクセスする方法としての検索もムービー対応が進んでいます。2018年5月に、抖音(ドウイン、中国版TikTok)に最初の検索機能をリリースしました。現在、抖音の検索機能の月間アクティブユーザー数(MAU)はすでに5.5億人を超えています。多くの方が、知りたいことがある時には、抖音を開き、ムービーを検索するようになっているのです。

私はかつて、抖音を人類文明のムービー百科全書にしたいと言ったことがあります。ムービー検索は、この百科全書の索引であり、答えを探したり、新たな知識への入口となるものです。

もちろん、ムービー検索を開発するのは簡単なことではありません。これからの1年、抖音は検索エンジンの開発に全力を投入します。ムービー検索に興味のある研究開発、プロダクトマネージャー、運営の方が参加してくれることを歓迎します!また、みなさんも抖音の検索機能を使ってみて、たくさんのご意見をください!」

バイトダンスのエンジニアはもちろん、他社のエンジニアもこの発言に反応しています。「バイトダンスがいよいよ動くのか」という反応です。

Next: 開発が進む「ムービー検索」。テキストは時代遅れになる?

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