旗振り役の総務省のご機嫌とり?NTT「ローカル5G」参入の理解不能

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3月30日、NTTコミュニケーションズは、ローカル5G環境構築において、導入コンサルティング、免許取得、機器構築、運用の支援を行う「ローカル5Gサービス」の提供を翌31日から開始すると発表しました。この動きに「なぜ?」と問いかけるのは、メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さん。5Gをリードするファーウェイ関係者の「ローカル5Gに注力している国は数カ国しかない」という証言を紹介し、世界的な需要が疑わしいところで、またもガラパゴス化してしまうのではないかと懸念を示しています。

NTTコミュニケーションズがローカル5Gに本格参入――世界的にはローカル5Gを展開する国は少数派

総務省がやたらと旗振りをしているローカル5G。それに応じてNECなどが積極的にローカル5Gを売り込んでいる。さらにNTTコミュニケーションズも3月31日からローカル5Gの導入コンサルティングから免許取得、機器構築、運用までを支援するサービスを開始した。

NTTコミュニケーションズが売りにしているのがNTTドコモとの関係だ。エリア調査や回線設計、設置工事、運用の一部などにおいて無線技術や知見を持つNTTドコモのローカル5G構築支援サービスを活用するというのだ。まさにNTTによるNTTドコモの完全子会社化、さらにNTTドコモの傘下にNTTコミュニケーションズを置くという構想があったが、NTTグループの一体化がもたらす強みと言えそうだ。

ただ、一方でNTTドコモが本気でローカル5Gに対して取り組む気があるのか、正直言って良くわからない。キャリアからの視点で見れば「ローカル5Gって無駄じゃないか」と言えなくもないからだ。

ファーウェイ関係者によれば「日本以外にローカル5Gに注力している国は数カ国しかない」という。他の国でも自治体や企業で5Gを活用しようという構想はある。しかし、そうした国々では、キャリアの5Gネットワークをスライシングして、自治体や企業が欲しい機能だけをキャリアから提供を受けるという考え方をしている。そのほうが設備投資もあまりかからず効率的なのは間違いない。

ソフトバンクも「プライベート5G」という言い方をして、限られたエリアのニーズに応えようとしている。ネットワーク設備はソフトバンクが用意し、エリアもソフトバンクが提供する。企業や自治体は必要に応じてネットワークの機能を使えばいい。総務省の手前、ローカル5Gにも対応するようだが、主力となるのはプライベート5Gなはずだ。

ローカル5Gを実現しようと思えば、まさにエリア調査や免許取得、回線設計、設備工事など導入コストが半端ない。NTTコミュニケーションズでは5Gコアおよび無線基地局設備を月額利用型のサービスとして提供するという。キャリアが提供するプライベート5Gとなると「毎月の通信費がかかる」のがネックになるかも知れないが、ローカル5Gで設備費用を月額利用型にすれば、どっちも似たようなコスト負担になるかも知れない。

グローバル的に見ると、ローカル5Gを推し進めるのはややガラパゴス的な進化をしそうな雰囲気が漂っている。「世界の自治体や企業に完全仮想化された5Gコアシステムを売り込む」と言っても、世界的にはそんな需要はないのかも知れない。

image by:oasis2me / Shutterstock.com

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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