2万人の市民が葬儀に参列。国民を救い社会を育てた渋沢栄一の人徳

cc20210414
 

大河ドラマ『青天を衝け』で、その生き方が改めて高い評価を得ている日本資本主義の父・渋沢栄一。晩年には実業家の暗殺が横行するものの、渋沢は一切標的にならなかったと言います。何が彼を凶刃から遠ざけたのでしょうか。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』は、作家・童門冬二氏と評論家・守屋淳氏の対談の模様を再録。そこでは多くの実業家とは志を異にする、渋沢栄一の人柄が語られていました。

渋沢栄一──その人間的器量の大きさ

NHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公・渋沢栄一が注目を集めています。生涯に481の企業経営、約600の社会事業に携わった渋沢ですが、これだけの大事業を成し遂げた渋沢とはどういう人物だったのでしょうか。

作家の童門冬二さんと、評論家の守屋淳さんに対談いただいた『致知』2019年12月号の記事の中からその人柄を物語る部分をご紹介します。


守屋 「渋沢栄一は農家に生まれて商売をやり、長じて侍になりました。その後、官僚を経て実業の世界に入り数多くの足跡も残しています。一生でこれだけのことがやれるのは、人間としての器量の大きさを物語っているように思うんです。

パリ万博に行った時、他の侍が誰も考えない経済の重要性に気づいて、日本に帰ってそれを実行しました。そういう発想ができるのは、いろいろな経験や苦労を通して人の気持ちがよく分かるからです。これはとても重要なことで、渋沢を大成せしめた要因の一つだと私は感じます」

童門 「明治4年、岩倉具視をリーダーとする使節団が欧米を視察したでしょう。新しい日本の国づくりをどのようにするのか、そのお手本を探そうとしてヨーロッパを歩き回ったわけだけど、大久保や伊藤博文といった連中が一番関心を寄せたのが、鉄血宰相と呼ばれたドイツのビスマルクの考え方でした。彼らはイギリスやパリで社会福祉の適用を受ける人たちを見ています。しかし、富国強兵を旨とするビスマルクの思想にコロッとまいってしまって『社会福祉事業は成熟後の国家がやるべきことだ。日本はまだそこまで行っていない』と考えるんです。

そんな中で渋沢はちょっと違った見方をしていました。成熟社会になった後で福祉をやるのではなくて、弱い人間に対する福祉は最初からきちんと取り組まなくてはいけないと」

守屋 「渋沢の晩年、暗殺が流行ったんですね。團琢磨や安田善次郎などいろいろな実業家が暗殺されましたが、渋沢は一切標的になっていません。安田を暗殺した朝日平吾という男は、その前に渋沢の家に行っているんです。しかし、この時、刃物は持っていなかったといわれています。渋沢が常に人々を救う、社会を育てるという思いで生きていたことを知っていたのでしょう。

有名な話ですが、渋沢が亡くなった時、飛鳥山の渋沢の家から青山の葬儀場まで並んだ見送りの数は2万人だとされています。誰かが動員したわけではなく、皆、お世話になったという感謝の気持ちで見送っているんですね。私が渋沢は実業家とは違うと思う理由の一つはそこです」

童門 「渋沢が忠恕の人でなかったら、そんなにも人々に惜しまれることはなかったでしょう」


メルマガが本になりました!新刊のご紹介 

cc20201202-s1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書
(致知出版社 刊)
致知出版社の「人間力メルマガ」』が一冊の本になりました。
日本が誇る超一流の方々の名言集、好評発売中!

image by: 公益財団法人渋沢栄一記念財団 - Home | Facebook

致知出版社この著者の記事一覧

京セラ・稲盛和夫氏、サッカー日本代表・岡田武史氏など、人間力を高める月刊誌『致知(ちち)』に登場した各界一流人の名言や仕事術など、あなたの「人間力アップ」に役立つ情報を配信中。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 致知出版社の「人間力メルマガ」 』

【著者】 致知出版社 【発行周期】 日刊

print
いま読まれてます

  • 2万人の市民が葬儀に参列。国民を救い社会を育てた渋沢栄一の人徳
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け