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佐川急便の「中国製EV採用」に動揺の声。埋めがたい価格差の壁で日本の軽自動車は終焉か?

佐川急便が国内での配送用トラックとして、中国製の電気自動車(EV)を採用したとの報道が、大きな波紋を呼んでいる。

日本経済新聞の記事によると、供給するのは中国の自動車・部品メーカー「広西汽車集団」で台数は7,200台。今年8月に仕様を固めて、9月にも量産を開始し、実際の納入は2022年9月になる見通しだという。

EVの普及で先行する中国製EVが日本に本格上陸する事例となる今回の件。広西のグループ企業は「量産に向けた準備を進めている」とコメントしており、日本の自動車メーカーが手薄な小型商用分野を、市場開拓の足がかりにする狙いだ。

ひっそり生産終了となった国産EV軽バン

世界的なEV化の流れに、日本の自動車メーカーがことごとく乗り遅れていると指摘されるなか報じられた今回の件。ネット上では「日本の自動車産業危うし」との意見が多く見られるとともに、右寄りな人々からは「日本の企業なら日本の車を選べ」といった反応もあがる。

ただ、他の媒体などに書かれている情報を総合すると、今回佐川が採用する車両の企画開発や製品保証は、日本の「ASF株式会社」が担当するとのこと。同社は2020年6月に、日本国内でのEVの普及促進を目指したファブレスメーカーとして設立され、昨年12月には双日と電気自動車インフラ事業の開発に向けて、資本業務提携を行ったと伝えられている。

要は佐川とASF社が共同開発した車両を中国の工場でOEM生産するという、言ってみればよくある話なのだが、記事のタイトルだけを見て脊髄反射的に反応した向きが結構多かったようだ。

いっぽう、今回の報道に絡んで「そういえば、日本の自動車メーカーも配送用のEVを作ってたっけ」という声とともに取沙汰されているのが、三菱自動車工業の「ミニキャブ・ミーブ バン」の存在だ。2011年12月に発売を開始した同車は、2019年に日本郵便の配送車として採用され、2020年度末までには東京都内を中心に1,200台が導入されると報道されていた。

ところが、配送車としてはそれ以上の活躍の場が与えられることはなく、今年の3月には生産を終了し、そのうえ後継車も無しということに。この「ミニキャブ・ミーブ バン」があまり普及しなかった大きな理由のひとつとして挙げられているのが、1台あたり240万円程度という価格だ。

ちなみに今回導入される中国製EVだが、佐川はそのコストを明らかにはしていないものの、日本経済新聞の記事によると「現状のガソリン車の軽ミニバンの130万~150万円を下回る水準」とのこと。ネット上では「あれだけ価格が違えばそりゃこうなるわ」との声もあがるなど、中国製の配送用EVが本格上陸するいっぽうで国産の配送用EVがひっそりと生産を終了するという現状を、多くの人が至極当然の結果として受け止めているようだ。

中国製格安EVの本格進出で日本の軽自動車は壊滅?

価格面での圧倒的な優位性で、日本上陸の足掛かりを掴もうとしている中国製EV。もちろん国内でもEVの普及は相当進んでいるようで、奥地の農村部でも40万円台で入手できるという格安なEVにくわえ、現地の法規上では自動車に分類されない免許不要の小型電動4輪、いわゆる「低速EV」も、10万円台から手に入るという爆安ぶりもあって、爆発的に普及しているという。

最近では、こういった中国製の格安EVが、今後日本の軽自動車市場を席捲していくのではという声も、多くのメディアからあがっている状況だ。日本の道路事情にも合い、車両価格も税金も安い軽自動車は、国内における新車販売で3割以上を占めるといわれるが、昨今のEV化の流れによってその価格が以前よりも上昇。そこに中国製の格安EVが進出してくれば、下手をすれば日本の軽自動車メーカーは壊滅してしまう……そんな声も聞こえてくる。

日本製EVが特に価格面で競争力を全く失っていることが、改めて浮き彫りになった今回の報道。国内においては若者を中心に「クルマ離れ」も叫ばれて久しいとあって、今後の巻き返しは相当な茨の道であることは間違いなさそうである。

Next: 「日本メーカーがモタモタしているうちに…」

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