メット無しでOKの街も。電動キックボードのシェアサービスは成功するか?

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日本の街に、新しい「乗り物文化」は根付くのでしょうか。今回のメルマガ『理央 周の売れる仕組み創造ラボ【Marketing Report】』ではMBAホルダーの理央 周さんが、4月よりスタートする電動キックボードのシェアリングサービスを紹介。その成功の可能性をプロの視線で分析・考察しています。

なぜ電動キックボードの「シェアリングサービス」がいま始まったのか?

電動のキックボードのシェアリングサービスが、4月から国内で始まります。

キックボードとは車輪付きの板に、電動式のモーターがついているもので、その板に乗って移動するものです。蹴って走るキックスクーターにモーターがついているので、電動式キックスケーターとも呼ばれています。

大雑把にいうと、スケートボードの先に伸びたハンドルがついていて、ハンドルで操作しながら、地面を蹴って走る、キックスケーターに、電動式のモーターがついて、楽に走れる、というものです。ちなみに、座れるサドルがついているものは、電動スクーターと分類されています。

一見、このキックスケーターは場所も取らないし、横幅も広くないので、狭い道も楽々行けそうですし、運転も楽そうなので、街乗りや、ちょっとした買い物には便利そうです。

しかし、警察庁交通局のホームページによると、「原動機が内燃機関(エンジン)でなく、電動機であっても、原動機付自転車に当たる」ので、公道を走る場合には、原動機付き自転車、いわゆる原付と同じ扱いになるので、その基準を満たしていなければなりません。装備としては、バックミラーや方向指示器が必要ですし、所有するには、自賠責保険に加入しなければなりません。もちろん軽自動車税も必要です。

また、実際に乗るには原付の免許が必要ですし、もちろん歩道を走ることはできません。そして、運転する時にはヘルメットを着用しなければなりません。このような装備なしで乗ろうとすると、公道はもちろん、公園などの公共の場所で乗ることはできず、乗ることができる場所は私有地くらいになってしまいます。なので、気軽に買ってちょっと乗ろうか、という意味においては、電動アシスト自転車とはちょっと訳が違うのです。

しかし、この4月から警視庁が一部の地域で、ヘルメットなしでも乗れることを認可するため、ループ、EXx(エックス ともに東京)、mobby ride(モビー・ライド、福岡)、はしごメーカーの長谷川工業(大阪市)の4社が、東京都渋谷区や千葉県柏市などで、サービスを始めることになりました。

もともと、電動キックボードは消費者向けに販売をされています。単なるキックボードと違って、やはり原動機がついているので、注意点もあり、販売サイトには多くの購入のヒントが書かれています。初心者にはハンドブレーキがついているものがいいそうですし、夜走るにはライトが明るいものがいい、といった具合です。

また、電気が動力なので、充電をしなければなりません。なので、充電にかかる時間や、フル充電した時の持続時間に気をつけてください、という注意点です。EVを買う時に注意するような点まで気にかけないといけない、ということになります。これは、買う意欲のある人たちにとって、潜在的に不安に思っていることになるので、所有しようと購入に踏み切る「バリア」になります。

また、価格帯は1万円台から始まり、20万円以上の本格的なものまである中で、5、6万円くらいの商品が主流です。ということは、価格の面でも、スケートボードや、普通のキックボードとは違って、電動アシスト付き自転車より少し低めの価格です。こうなと、購入するときに考える要素が多くなる、高関与商品に分類されます。

これらの要素を考えると、ヘルメット着用不要で、維持費や置く場所などの負担を考えた場合、短い距離であれば、歩いたり、電動アシスト式自転車、原付バイクや自動車よりも、電動キックボードのシェアリングにしたい、と考える人も多くなるでしょう。

お客様は、商品からお客様が得る「便益」だけではなく、お客様が支払う、体験時の「犠牲」も考えます。今回の電動キックボードのシェアリングサービスでは、便利さ、という便益だけではなく、所有する面倒さ、支払うべき固定的な保険料などといった、お客様が妥協しなければならない犠牲を削り取っているのです。

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