予定変更ぎらいな日本人。それでもワクチン接種の順番は変えるべき理由

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日本国内でのワクチン接種計画は、2月17日から医療従事者等への接種を開始し、次に4月12日から高齢者となっていました。開始のスケジュールだけは守られたものの4月半ばで2回の接種を終えた医療従事者はわずか15%。感染リスクを抱えたまま高齢者へのワクチン接種を行う人が多くいることに対し、メルマガ『8人ばなし』著者の山崎勝義さんは、守るべきは医療従事者への2回接種を終えることと主張。変異株により、若年層の重症者数も増えている現状では、もはや高齢者優先というスケジュールすらも再考すべきで、オリンピックの予定など棚上げで当然と持論を述べています。

スケジュールのこと

先進国の間でようやくCIVID-19が落ち着き始めたな、と思うも束の間、日本では逆に過去最大最悪の第4波の到来である。ゲームチェンジャーと期待されたワクチンもその先を越されるようなかたちで変異株によってゲームのルール自体を変えられてしまった、そんな感じである。

突然のスケジュール変更。日本人が最も嫌い、そして苦手とするところである。遡って考えるに、おそらく今年1月の緊急事態宣言発出時点では、まず何とか春までに第3波を抑え込み、然る後にワクチン接種を漸次進め、夏に何とかオリンピック、という算段であったに違いない。

ところが蓋を開けてみれば、第3波が沈静する間もなく変異株による第4波が到来し、ワクチンスケジュールはどの段階においても全体的に遅れ、オリンピックに至っては強行論以外の選択肢が政権与党の要職者の口から言及されるまでになった。確かに首都東京で現下の大阪のような事態が遅発的に起これば、その人口比を見るまでもなく大惨事になることは疑いようがない。さすがにそうなればオリンピックどころではあるまい。

では我々にはどのような選択肢が残されているのであろうか。まずはオリンピックを一旦棚上げにすることである。中止というのが業腹なら取り敢えずは無視でもいい。そうやって時限をなくすことで焦りから来る綻びを最小限にするのである。というのも、現下のような変異株流行時にはこの焦りというものが命取りにもなり得るからである。

実際今、各地で高齢者へのワクチン接種が始まってはいるが、それを行っている医療従事者のうちワクチン接種(2回接種)が既に終わっている人は僅か15%に過ぎない。言い換えれば85%の医療従事者がほぼ無防備な状態(つまり安心できない状態)で、この感染症に最も弱い高齢者に注射をしているという訳である。もしこの85%の中から感染者が出れば我々は最前線で戦う貴重な戦力を失うことになる。逆にもし高齢者に感染させれば貴重な生命が失われ、延いては貴重なワクチンをも無駄にしてしまうことになるかもしれない。

これを軽率と言わずして何と言う。まずは医療従事者からではなかったのか。ならば、そうすべきである。そしてその医療従事者への接種を以て最良最大最後の治験とするのではなかったのか。ならば、そうすべきである。これらのことこそまさしくスケジュール通りに粛々とすべきことなのである。

そしてついでに言うと、変異株流行下においては従来のワクチン接種の優先順位の評価も当然見直されるべきだと思うのである。基礎疾患もない健康な30、40、50代の人がバタバタと重症化しているという現実がある。10代も感染するなら接種年齢の下限も当然見直すべきだとの意見もある。「同じ程度のリスクなら若い方から先に」私自身も含め、誰もが思うことであろう。

我々日本人は幸か不幸か(今は敢えてこういう言い方をするが)、新型コロナウィルスとは緩く、甘い戦いしか経験して来なかった(諸外国と比べて)。とすれば、我々にとってこの変異株は既に「新型」新型コロナウィルスである。ここに来てまたその姿を現した未知なるものである。なればこそ、今まで通りの緩さ、甘さでは全く通用しないかもしれないことを覚悟しておくべきだ。

仮に今までの日本が恵まれていたなら、その天祐を活かすも殺すも我々の覚悟次第なのである。

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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