韓国が混乱。日本政府に損害賠償請求した慰安婦の訴え却下の衝撃

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従軍慰安婦問題に関して、韓国で「歴史的」とも言える出来事が起こりました。今回の無料メルマガ『キムチパワー』で韓国在住歴30年を超える日本人著者が伝えているのは、元慰安婦が日本政府に対して損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁が原告の訴えを却下したという報道。著者は記事中、これまで考えられなかった慰安婦実質敗訴の判決が下された国内事情を分析するとともに、今後の慰安婦や徴用工を巡る裁判の行方を考察しています。

歴史的な判決になるか

このところ韓国は毎日と言ってもいいほど、いろいろの動きがある。昨日4月21日にある慰安婦裁判の判決があったのだが、この裁判は、一言でいうと慰安婦側の敗訴となった。文政権下で、こんな判決が出るとは、驚天動地の出来事といえる。これは、歴史的な判決になるかもしれない。

今回は20人の慰安婦+遺族がおこした裁判だった。ちなみに、1月8日は別の12名の慰安婦たちの裁判。これらは別々の裁判である。今回の20人の中にはあの有名なイ・ヨンスハルモニも入っている。

1月での裁判(ソウル中央地裁民事34部)は、日本に賠償せよとの判決が出された。それに日本政府がだんまりを決め込んでいるから、慰安婦側は韓国内の日本の財産目録を出せと訴訟を起こした。それを3月29日の裁判では、慰安婦側の要求を否定する判決を出していた。その流れの中で、今回4月21日の裁判(ソウル中央地裁民事15部)で、慰安婦側の損害賠償請求を却下すると宣告したのである。

1月の段階では、“慰安婦問題のような重大な人権侵害は、国際法上最高規範である強行規範違反に該当するために、日本政府に例外的に国家免除を適用してはならない”と、原告勝訴(慰安婦側の勝訴)していた。これを今回、覆した判決となったわけだ。国家免除とは、何かのカドで他国の国家を訴えることはできないという原則。

今回4月の段階での注目点は、“如何なる国家も国際条約を履行しないことを正当化するために司法部の判決等一切の国内事情を援用してはならない”と判決文ではっきり明言している点だ。これは実は、「一国の公権力行使など主権的行為に関しては、国家免除を適用しなければならない」という1998年の韓国大法院(最高裁判所に相当)の判例とも一致する。裁判部は「武力紛争下の国家行為は自国の利益と主張を貫徹するために軍隊など武力を動員するもので、他国の法廷で責任を問うことはできないというICJ=国際司法裁判所の判例など、国際慣習法を韓国の裁判所が変更することは難しい」という趣旨も説明した。4月の裁判部はまた、“1965年の韓日請求権協定と2015年韓日慰安婦の合意など両国間の条約と合意も考慮しなければならない”と明言している。

今回の判決は、当初1月13日に下される予定だった。ところが5日前の1月8日、別の裁判部(民事34部)が「例外的に国家免除を適用すべきではない」と原告勝訴の趣旨で判決を下した(上述)。慰安婦被害訴訟で初めて日本政府の損害賠償責任を認めた判決で、従来のICJの判例や韓国大法院の判例と反対となる初の判決であり、裁判所内外に波紋を呼び起こしていた。この判決に関しては、日本政府が控訴せず、1審判決として確定している(話にもならないから日本政府はだんまりを決め込んでいただけだが)。

すると、今回、2回目の慰安婦損賠訴訟を扱っていた民事15部は、“国家免除論に対する追加検討が必要である”とし、1月の判決から3か月後の4月21日、正反対となる「棄却する」との判決を下したわけだ。

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