中国と全面戦争か。日米首脳共同声明の「台湾」明記で迫られる決断

arata20210422
 

もはやいつ勃発してもおかしくないとされる台湾有事ですが、それはすなわち「日本の有事」でもあるようです。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、先日行われた日米首脳会談の共同声明に「台湾」という文言が盛り込まれた意味を解説。その上で、日本はこれまでの「アメリカ頼りの他力本願」ではいられなくなったとの見方を記しています。

台湾言及の日米共同声明は何を意味するのか

菅首相にとって、今回の訪米は、中国との対決姿勢を鮮明にする米・バイデン政権から、歴史的な決断を迫られる厳しい外交舞台だった。

経済的結びつきの強い中国の反発を食らおうとも、台湾防衛でアメリカと歩調を合わせられるかどうか。日米共同声明に盛り込む文言をめぐって、踏み絵を突きつけられたのだ。

バイデン大統領が対面で会談した初の外国首脳だと浮かれている場合ではない。安倍前首相時代のパフォーマンス外交は影を潜めた。ハンバーガーに手をつけることなく、マスクをしたまま話し込む両首脳の姿に、華やかさはみじんもなかった。

台湾を軍事力でねじ伏せ、統一をはかろうという中国の習近平国家主席の野望が、このところの台湾海峡における中国軍機や艦船の活発な動きから、剥き出しになっている。

そうしたなか、米軍幹部の発言が世界を震撼させた。AFPによると、3月23日、米上院軍事委員会の公聴会で、次期インド太平洋軍司令官に就任予定のジョン・アキリーノ太平洋艦隊司令官は、中国による台湾侵攻の脅威は深刻であり、多くの人が理解しているよりも差し迫っている、との考えを示した。

現・インド太平洋軍司令官であるフィリップ・デービッドソン氏も、それより少し前、中国の軍拡が予想を上回るペースで進み、米国の抑止力が低下、中国が今後6年以内に台湾を侵攻して支配下に置く可能性がある、と指摘していた。

アキリーノ氏の発言はデービッドソン氏の指摘よりもさらに切迫した状況を描き出している。

むろん、中国にしてみれば、平和的に統一するにこしたことはないが、香港市民への弾圧を目撃した台湾の人々には、「一国二制度」統治への拒否感が強い。いまのところ習近平主席の野望は、軍事力を背景にした威嚇、ないしは軍事侵攻でしか叶えられそうもない。2022年に北京で開かれる冬季五輪までは大丈夫だとしても、心配なのはその後である。

昨年8月、米民主党はバイデン氏を正式な大統領候補に指名する党大会で新綱領を採択した。そのなかに、つぎのようなくだりがある。

「われわれは台湾関係法にコミットし、今後も台湾の人々の期待と利益にかなう台湾海峡両岸問題の平和的な解決策を支持していく」

台湾の利益にかなうよう、両岸すなわち台湾と中国の問題に関与するというのだ。中国が台湾に武力を行使すれば、米国はためらわず介入する姿勢を示したものだろう。

草案にはあった「一つの中国政策を支持する」という文言が、この綱領から削られているのも重要だ。トランプ氏を相手にする大統領選にあたり、バイデンは中国に弱腰というイメージを払拭するのが狙いとしても、台湾は中国の一部と主張してやまない中国政府の意にそわないのは明らかであり、対中政策の転換を明確に示している。

バイデン政権は今年3月から、民主主義陣営の関係強化による“中国包囲網”構築に本腰を入れ始めた。3月12日の日米豪印首脳電話会談(クアッド)、同16日の日米外務・防衛担当閣僚安全保障協議(2プラス2)。そして、4月15日には、知日派として著名なリチャード・アーミテージ氏ら代表団を台湾に送り込み、蔡英文総統との会談を通じて、アメリカが台湾を支援する立場を鮮明にした。

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