「雑草という草はない」 生物学者・昭和天皇の姿―国立科博が生誕120年展

2021.04.29
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by 時事通信


皇居の生物学研究所で標本を手にする昭和天皇=1986年

皇居の生物学研究所で標本を手にする昭和天皇=1986年

  • 昭和天皇が新種として発表した国立科学博物館所蔵のヒドロ虫類「ベイヤーウミヒドラ」の液浸標本(同館提供)

 昭和天皇(1901~89年)の生誕から、昭和の日の29日で120年。国立科学博物館(東京都台東区)の企画展「昭和天皇の生物学ご研究」では、1人の生物学者としての昭和天皇の姿が見て取れる。新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言を受け、5月11日まで臨時休館中だが、企画展は再開後に完全予約制で6月20日まで開かれる。
 植物や昆虫など生き物に興味を持っていた昭和天皇は16歳の時、御用邸があった静岡・沼津の海岸でショウジョウエビを見つけた。海洋生物への関心を高め、特にイソギンチャクの仲間であるヒドロ虫類の研究に力を注ぎ、多くの著書も残した。
 側近の記録には学者らしいエピソードが残る。侍従長を務めた入江相政氏の「宮中侍従物語」によると、65年9月、昭和天皇が那須で静養中に侍従らが皇居・吹上御所周辺の草を雑草として刈ったと聞き、「雑草ということはない」と発言。「どんな植物でも皆名前があって、それぞれ自分の好きな場所で生を営んでいる。人間の一方的な考え方で、これを雑草と決め付けてしまうのはいけない。注意するように」と話したという。
 同館の並河洋・海生無脊椎動物研究グループ研究主幹は昭和天皇の功績について、「分類学を現代までつないだ」と話す。大正から昭和初期にかけ、生物学の中で基礎研究で地味な分類学は学問として絶えかねない状況だったという。
 企画展では、昭和天皇が実際使った網や顕微鏡、ショウジョウエビやヒドロ虫類の標本など計238点を展示する。(2021/04/29-08:21)

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