4月30日、楽天モバイルがアップル製品の取り扱いを開始。六本木店でのiPhone発売記念イベントには三木谷浩史会長兼CEOも登場し、iPhoneを正式に取り扱う喜びを語りました。メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは、イベント後の囲み取材で三木谷会長が語った「アップルがiPhone供給を決めた理由」を紹介。それが真実だとした場合のアップルの狙いと、楽天の可能性について言及しています。
完全仮想化ネットワークの道路で3社のiPhoneと差別化できるか
4月30日、楽天モバイルがiPhone発売記念イベントを同日、新規オープンとなった六本木店で開催した。先週、プレスカンファレンスには登壇しなかった三木谷浩史CEOが挨拶を行った。
イベント終了後には10分程度の囲みも行われた。そのなかで、アップルが楽天モバイルにiPhoneを供給する理由として三木谷浩史CEOは「我々のネットワーク品質に高い評価をいただいたことが大きい」と語っていた。
三木谷浩史CEOはティム・クックCEOと面識もあり、会話をする仲だ。コロナ禍でリアルには当然会えてはいないようだが、三木谷浩史CEOは「新しい完全仮想化ネットワークを驚異的なスピードで構築したという評価もあるのでは。iPhoneをクルマに例えれば、完全仮想化ネットワークという道路に変わる。衛星を活用する構想にも興味があるようだ」とアップルとティム・クックCEOが完全仮想化ネットワークと衛星を使ったエリア構築に関心があるとした。
アップルは5G対応のiPhone 12を開発する際、世界のキャリアと一緒になって検証作業を行ってきたと説明していた。その時は当然のことながら、ソフトバンク、KDDI、NTTドコモのロゴがあったが、楽天モバイルの名前はなかった。果たして、楽天モバイルとアップルがどのように5Gネットワークを検証してきたのかは気になるところだ。
今回、楽天モバイルはiPhoneシリーズとAirTagを導入したが、iPadシリーズとApple Watchはもうしばらく後になるのだろう。Apple Watchに関しては、iPhoneの電話を、セルラー版のApple Watchでも着信できる機能をキャリアが用意しなくてはいけない。といっても、ソフトバンクとKDDIはエリクソンの仕組みを導入していると言われている。アップルは、キャリア向けのネットワーク機能に関してはエリクソンと共同開発しているものと思われる。
仮にアップルが楽天モバイルの完全仮想化ネットワークに関心があるとするならば「完全仮想化ネットワークでApple Watchの仕組みをどれだけ簡単に導入できるか」という点が気になっているのでないだろうか。
楽天モバイルが言うように、完全仮想化ネットワークによって、アップルが求める機能も簡単に低コストで導入できる技術があったとするならば「アップルがネットワークを評価した」と言っても納得がいく。
三木谷CEOが語った「iPhoneをクルマとすれば完全仮想化ネットワークは道路」というのであれば、4キャリアで同じiPhoneであっても、仮想化ネットワークという道路で、他の3社を差別化できることになる。3社よりも「快適かつ高速で使える道路」を本当に提供できるのか。4社が同じiPhoneを揃えたことで、ネットワーク品質の競争がまた過熱することになりそうだ。
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